2017 Fiscal Year Research-status Report
海産無脊椎動物レクチンの構造多様性に基づく新規機能解明とその応用
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17K07760
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
畠山 智充 長崎大学, 工学研究科, 教授 (50228467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海野 英昭 長崎大学, 工学研究科, 助教 (10452872)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レクチン / 蛋白質工学 / 糖鎖 / X線結晶構造解析 / 海産無脊椎動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,生体内糖鎖を特異的に認識し,生物の様々な生理機能に結びつけるために中心的な役割を果たしている糖結合タンパク質レクチンの構造と機能を,特に海産無脊椎動物由来のものを対象として研究を行った。海産無脊椎動物の一種である棘皮動物に属するウニの中でも,ラッパウニ(Toxopneustes pileolus)の叉棘に含まれる新規なレクチンとしてSUL-Iを見出し,そのcDNAクローニングを行うことにより,遺伝子配列及びアミノ酸配列を明らかにした。さらに得られたcDNAを用いて大腸菌により組換えSUL-Iを発現させ,得られたタンパク質を活性型として精製することに成功した。得られた組換えSUL-Iは糖の一種であるL-ラムノースに対する強い結合特異性を示すとともに,アミノ酸配列において,これまでに魚類の卵中に多く見いだされているラムノース結合レクチン(RBL)との相同性が認められた。しかしながらSUL-Iは2つのドメインから成る魚類RBLとは異なり,3つのドメインから成るこれまでに知られていない立体構造を持つことをX線結晶構造解析から明らかにした。さらに糖鎖マイクロアレイを用いることにより,ラムノース以外にガラクトースを末端に有するオリゴ糖鎖にも親和性を示すことを明らかにした。一方,二枚貝に属するウチムラサキからも新規なレクチンSPL-1,SPL-2を単離し,そのcDNAクローニングと組換え体発現を行った。その結果,SPL-1とSPL-2はアミノ酸配列上の相動性がほとんど見られないにも関わらず,その立体構造はC型レクチンと非常に類似していること,またC型レクチンと異なり,糖との結合にカルシウムイオンを必要としないことなどを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海産無脊椎動物レクチンの構造と機能を解明するために重要となるcDNAクローニングが順調に進んだことで,目的タンパク質の一次構造が明らかになるとともに,データベースと比較によって,それらのタンパク質の機能を推定することが可能になった。また,微生物を用いた組換え体発現も技術的に確立されており,微量にしか存在しないタンパク質についても活性タンパク質を調製したうえで立体構造解析が進んだ。これらの結果から本研究は順調に進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は新規なC型レクチンが得られた二枚貝についてさらに研究を進め,その糖結合特異性を詳細に調べる。また,ラッパウニ叉棘毒液からは,レクチンを始め様々な生理活性タンパク質が単離されているが,SUL-Iのように同様な生理活性タンパク質が魚類等の海産動物にも存在している可能性が高く,多くの海産動物試料よりcDNA配列の網羅的解析を行うことによって,新規なレクチン等の生理活性タンパク質の発見と構造・機能解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
物品費については,ほぼ予想通りの必要額であったが,多忙のため当初の計画より発表の機会が少なくなったことなどにより,研究発表のための旅費の支出が少なくなり未使用額が発生した。次年度については,これを含めて研究発表の機会をより多く持つことを目指す。
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Research Products
(15 results)