2018 Fiscal Year Research-status Report
裸子植物ソテツの体温振動を支える光依存的発熱分子メカニズムの解明
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17K07762
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
稲葉 靖子 宮崎大学, 農学部, 准教授 (80400191)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発熱植物 / ソテツ / シアン耐性呼吸酵素 / ミトコンドリア / 光シグナル伝達 / 体温振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
花による発熱現象は、裸子植物から被子植物まで約80種の植物で報告がある。その中で、裸子植物は過半数を占めるが、植物の発熱研究はこれまで被子植物が中心であった。日本に自生する裸子植物ソテツ(Cycas revoluta)も、その発熱諸性質は十分に検証されていなかったが、最近申請者らは、本植物の花は、光に依存して体温を変化させ、被子植物の発熱に役割を持つシアン耐性呼吸酵素(AOX)が、一部の組織で活発に働くことを明らかとした。AOXはミトコンドリア内膜の内側に埋め込まれた膜蛋白質であり、ソテツの花は発達した葉緑体を持たないため、光が花の発熱を誘導する機構には興味が持たれた。そこで本研究では、植物による光シグナル伝達と熱産生をつなぐ新規機構の解明を目指して、C. revolutaの光依存的な発熱分子機構を明らかとすることを目的としている。 H30年度は、ソテツの花の発熱関連遺伝子と推定されている2つの遺伝子について、光照射後と消灯後に、経時的に雄花の小胞子葉・小胞子のうおよび雌花の大胞子葉・胚珠のサンプリングを行い、当該組織のRNA調製とリアルタイムPCRによる発現解析を行った。前年度に、新学術領域研究「先端ゲノム支援」の採択課題を選定され、RNA-seq解析研究を推進できたことにより、リアルタイムPCRのインターナルコントロール探しも順調に行うことができた。なお、H28年度とH29年度の研究成果を含む論文が、植物分野で世界的に有名な雑誌であるPlant Physiologyに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績にも記載したように、申請研究の1年目(H29年度)に新学術領域研究「先進ゲノム支援」に採択されたことにより、本申請研究で予定していたRNA-seq解析については、飛躍的に進展させることができた。また、本年度は、Plant Physiologyに論文が受理されたことから、現在までの進捗状況としては、(1)当初の計画以上に進展している、に該当すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請研究の2年目(H30年度)に行ったリアルタイムPCRによる発熱関連遺伝子の解析では、花ごとに発現レベルのバラツキが大きかった。これは、サンプリングの際、ソテツの幹から切り取った花の成長ステージにバラツキがあったためと考えられた。そのため、次年度の研究では、ソテツの花を採取するタイミングをしっかりと検討して研究を進める。また、次年度も引き続き、AOXキャパシティが検出された組織については、より詳細な呼吸特性を、様々な基質や阻害剤を用いて調査する。
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Causes of Carryover |
発熱する花の呼吸測定用機器購入のため、次年度使用額が生じた。
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