2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K07764
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
藤井 道彦 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (80285155)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | aging / C. elegans |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素は多くの生物の生存に必須であるが、酸素の一部は代謝の過程で活性酸素へと変わる。私たちは、モデル生物の線虫Caenorhabditis elegans、酵母Saccharomyces cerevisiae、哺乳動物培養細胞を用いて活性酸素感受性に変化を示す突然変異体を取得し、その解析を行ってきた。本年度の研究では、線虫C. elegans突然変異体の解析、および、人々の健康増進に有用な機能性物質の探索を行った。 <活性酸素高感受性変異体oxy-7の原因遺伝子の解析> 突然変異体oxy-7の原因遺伝子を同定した。(以前は、oxy-8と記述していたが、以降、oxy-7に変更する。)昨年度の解析で、酸素濃度を変化させ(1%と21%)、oxy-7の寿命を測定した。oxy-7は21%酸素下では寿命が短縮するが、1%酸素下ではその短縮が軽減されることが、示唆されていた。本年度は、実験をさらに繰返し、その再現性の確認ができた。また、oxy-7の活性酸素生成について定量的な解析を試み、予備的な結果であるが、oxy-7では野生型と比較し、活性酸素生成が上昇していることを見出した。これらのことより、oxy-7の活性酸素感受性の増大は、細胞内の活性酸素生成量の増大が原因であると考えられた。 <人々の健康増進に有用な機能性物質の探索> 機能性物質のソースとして、インド亜大陸の伝統医学であるアーユルヴェーダで使用される多数の薬草を用い、それらより抽出液を作成し、有用な物質のスクリーニングを行う。これまでの研究で、マウス個体の、放射線防御および皮膚の光老化防止に有効な薬草抽出液を見出しており、さらにそれらの効果には、抗酸化物質が関与することを見出している。その物質の同定のために、培養細胞を用いた簡易的なアッセイ系の確立を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験作業そのものは、おおむね順調に進めることができた。必ずしも期待した通りの結果が得られなかったものもあるが、引き続き実験を進めたい。 本年度は、oxy-7の活性酸素生成量について調べた。まず、個体レベルで活性酸素の生成量の定量を試みたが、個体差が大きく、はっきりとした結論を得ることができなかった。そのため当初の予定を変更し、細胞抽出液を作成し活性酸素の定量を試みた。現在おおむね満足のいく結果を得られていると考えている。そして、予備的な結果ながら、oxy-7は野生型と比較し、活性酸素の生成量が高いことを示すデータを得ている。引き続き解析を進める予定である。 有用な機能性物質の探索では、培養細胞を用いた簡易的なアッセイ系の確立を試みたが、血清のロットが活性酸素の感受性に影響を与えることが判明したため、現在予備調査を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、本研究課題の研究方針に大きな変更はない。 <活性酸素高感受性変異体oxy-7の原因遺伝子の解析> 当初の予定通り、本年度も引き続き、oxy-7突然変異体および同遺伝子の解析を行う。本年度は、まず、活性酸素の生成量の測定を完了させる。次いで、C. elegansを用いて、様々な金属イオンへの感受性、特に亜鉛を中心にして、感受性を調べる。また、金属イオン量、特に亜鉛量の調節が、oxy-7の活性酸素高感受性にどのように影響するか調べる。亜鉛イオンと活性酸素の制御機構について新たな知見が得られることを期待している。 <人々の健康増進に有用な機能性物質の探索> 培養細胞を用いた抗酸化効果や細胞増殖の簡易的なアッセイ系を確立する。薬草抽出液をHPLCにて分画し、シングルピークになるまで精製する。得られたピークを質量分析計似て解析し、その物質の構造を推定する。老化防止につながるような物質の発見を期待している。
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Causes of Carryover |
血清や機器等の購入が4月にずれ込んだため。
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