2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒスチジンリッチペプチド/タンパク質の細胞内取り込み機構の統合的解明
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17K07771
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岩崎 崇 鳥取大学, 農学部, 准教授 (30585584)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒスチジン / タンパク質 / マラリア / 細胞膜透過 / 細胞毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに当研究室において、ヒスチジンが連続したペプチドであるポリヒスチジンが高い細胞膜透過を示すことが発見された。そこで、自然界に存在するヒスチジンを豊富に含んだタンパク質も同様に細胞膜を透過するのではないかという予想のもと、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)由来のヒスチジンリッチタンパク質であるHistidine Rich Protein 2(PfHRP2)に着目した。PfHRP2は、熱帯熱マラリア原虫が赤血球に感染した際に、ヒト血中に多量に放出されるタンパク質である。昨年度は、高濃度(1~5 μM)のPfHRP2を添加したヒト線維肉腫細胞:HT1080細胞において、PfHRP2の細胞膜透過とそれに続く細胞毒性を明らかにした。本年度は、PfHRP2の細胞膜透過と細胞毒性が複数のヒト培養細胞においても普遍的に観察される現象であることを確認した。さらに、熱帯熱マラリア原虫が感染した際のヒト血中内PfHRP2濃度と同程度(40~100 nM)のPfHRP2においても、細胞と長期間(72~120 h)接触させることにより細胞毒性を示すことが確認された。このPfHRP2の細胞毒性はアポトーシス誘導によるものであった。また、血清タンパク質濃度が低い条件下では、PfHRP2の細胞膜透過と細胞毒性が増加することも確認された。この結果は、血清タンパク質濃度が低い状態(例えば栄養失調状態)では、PfHRP2の危険性が高まる可能性を示唆している。本研究成果は、熱帯熱マラリアの致死性にPfHRP2が関与している可能性を示唆するものである。PfHRP2のさらなる研究を進めることで、熱帯熱マラリアの新たな治療法開発に貢献できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、PfHRP2の細胞膜透過メカニズムと細胞毒性メカニズムについて解析することを予定していた。PfHRP2の細胞膜透過と細胞毒性が、それぞれどのような条件によって制御されるかを明らかにすることができた。これにより、PfHRP2の細胞膜透過メカニズムと細胞毒性メカニズムについてある程度予測を立てることはできているが、細胞膜透過ならびに細胞毒性を示す際に、PfHRP2がどのような分子に直接作用しているかまでは明らかにすることができなかった。 ゆえに、PfHRP2の細胞膜透過メカニズムと細胞毒性メカニズムの完全解明までは至っておらず、そのため「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、PfHRP2の細胞膜透過メカニズムならびに細胞毒性メカニズムの一端を明らかにすることができたので、今後はより詳細なメカニズム解明を試みる。具体的には、PfHRP2が細胞内へ取り込まれる際に、どのような受容体・経路を介しているかを明らかにするために、PfHRP2が結合する細胞表面の受容体の特定を試みる。同様に、PfHRP2が細胞内でどのような分子と相互作用して細胞毒性を示しているのかを明らかにするために、PfHRP2が結合する細胞内標的の特定を試みる。光反応性架橋剤を用いた光アフィニティーラベル法により、PfHRP2と細胞表面受容体または細胞内標的を架橋する。PfHRP2と細胞表面受容体/細胞内標的の複合体をアフィニティー精製により回収し、質量分析法(Peptide Mass Fingerprinting法)により解析することで、分子の同定を行う。 上記アプローチにより、PfHRP2の詳細な細胞膜透過メカニズムと細胞毒性メカニズムを解明することで、熱帯熱マラリアの重篤化を防ぐ方法の開発を目指す。
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