2018 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of novel heterocycles based on oxidative and radical coupling under mild and environmental benign conditions
Project/Area Number |
17K07776
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
谷森 紳治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (50207198)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | L-プロリン / 環境調和型合成 / 有機分子触媒 / キナゾリン誘導体 / ワンポット合成 / グラムスケール合成 / 含窒素複素環化合物 / 超原子価ヨウ素試薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,当初計画の代替として、有機分子触媒を利用したキナゾリノン類縁体の新規環境調和型合成法の開発を重点的に探求した。4-キナゾリノンを骨格に持つ化合物は、多様な生物活性や催眠・鎮静作用を持ち、さらに癌の治療に対する利用も提案されている非常に有用な化合物であり、新規薬剤を開発する際の有力な候補化合物として注目されている。しかし従来、その骨格を形成する方法として、銅などの遷移金属を触媒に用いた反応や大過剰量の塩基を用いた反応が報告されているが、それらはグリーンケミストリーの観点から、反応段階が多い、低収率など問題点がある。さらに、N-1置換体の合成の報告例は少ないのが現状である。そこで本研究では、入手容易な基質から、安価で環境負荷が低い有機分子触媒を用いることにより、環境調和型C-Nカップリング反応を開発し、キナゾリノン類縁体の新規合成法の確立を目指した。 まず種々の2-ハロゲン化ベンズアミド1と種々のイソシアネート誘導体2を縮合させ、新規化合物8種を含む12種類の基質となるウレア誘導体3を収率35%~94%で得た。 同時に、2-ブロモベンズアミド1aとフェニルイソシアネート2aより合成したウレア体3aをモデル基質として、分子内C-Nカップリング反応の最適化についての検討を行った。その結果、L-プロリン(40 mol%)を用い、KOt-Bu (2当量) の存在下、DMSO中85 ℃、8時間反応させたところ、最も高い収率(92%)で期待したキナゾリノン類縁体4aが得られることを見出した。 今後、アミノ酸および塩基、溶媒をいくつか検討し、有機分子触媒を触媒量に減少させるとともに、ウレア体3およびキナゾリノン類縁体4の誘導体を新規誘導体を含めて20種類程度合成し、それを生理活性評価するとともに、本反応のOne-Pot化ならびにグラムスケールでの合成を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように,ギナゾリン誘導体の塩基存在下,プロリンを触媒に用いたメタルフリー条件下,新規環境調和型合成法が軌道に乗りつつある。本反応は,従来の銅触媒を利用する反応などに比べ,簡便で誘導体合成も容易であり,ケミカルライブラリーの構築,スクリーニングへの利用等に遊離であり,発展が期待される。 また,オキサゾールの超原子価ヨウ素試薬を用いる合成において,以前報告したエナミドを経由する段階的方法のワンポット化に成功した。また,本反応を利用して,オキサゾール系制癌剤中間体の合成にも成功している。 一方で,ベンゾオキサゾール合成のベンゾチアゾール体への展開など,当初の計画通りに反応が進行しない例も見られた。またインドールや,キノキサリンの合成に関しては以上の反応の検討に手間取ったため着手出来ておらず,当初計画達成のため,研究期間の延長により遂行したい。 以上の理由から、(2)おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,順調に進行しつつあるギナゾリン誘導体の合成に関しては、ベンズアミド由来の芳香環ならびに,ヒドラジンの置換基に関して,様々な原料を合成し環化反応を試み,基質一般性を検証する。また同時に,中間体を単離しないワンポット化も可能であるか試みる。 また,当初の計画にもかかわらず着手出来ていない反応である,①キノキサリノンのメタルフリーフリー合成,すなわち,アニリンとアミノ酸から合成したアミドの,超原子ヨウ素試薬等の酸化剤による環化反応によるキノキサリノン誘導体の合成,②2-ハロアニリンとβ-ケトエステルから合成したエナミンのプロリン触媒下,塩基によるラジカルカップリングによるインドールの合成,③ヒドラジンと,アレーンの超原子価ヨウ素試薬を用いた分子間C-Nカップリング反応、④アニリンとヒドラゾンの付加反応で生成するアミドラゾンの分子内メタルフリーカップリングによる3-アミノインダゾールの合成など,報告例のない未達成の新規な環境調和型合成反応を開発する。 以上が達成されることにより,新規誘導体を含めた含窒素複素環化合物のケミカルライブラリーの構築が容易となり,創薬研究が加速されると共に,環境調和性が高く,永続的な有機合成反応の開発に貢献出来ると考えている。
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Causes of Carryover |
研究課題の進行状況が当初の予定とズレが生じ,必要な機器,試薬類の購入を見送ったが、本年度は購入が必要な見通しである。
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