2018 Fiscal Year Research-status Report
腸内環境と腸管透過性との関連に着目した難消化性糖質による腸管免疫修飾機序の解析
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17K07790
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
日野 真吾 静岡大学, 農学部, 准教授 (70547025)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / フラクトオリゴ糖 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の試験結果から,フラクトオリゴ糖(FOS)を摂取したラット盲腸内のpHおよび有機酸パタンは透過性の亢進とリンクしており,FOS摂取によるdysfermentationが腸管透過性の亢進に関与すると考えられた。そこで,本年度はこの有機酸パタンを作り出す腸内細菌叢について解析を行った。 菌種の多様性は, 対照群に比べFOS群で半減し, この多様性の減少は摂取8wkでも回復しなかった。この結果は, FOS摂取によって腸内細菌叢を構成する半数の細菌種が死滅することを示しており, FOS 摂取によって腸内細菌叢が新たな構成へ遷移したことを意味している。一方, 構成比を加味した菌種構成の類似度は, 対照群とFOS摂取1wk群間に比べ, 対照群とFOS摂取8wk群間で高く, 主要な細菌種は摂取期間の延長により復元し, FOS摂取8wkでは, これらの細菌種をコアとした腸内細菌叢が再構築されたと考えられる。FOS群で構成比の上位20を占める菌種 を対象にして乳酸, 酢酸, 酪酸濃度との相関解析を行い, 乳酸関連菌12菌種および酢酸・酪酸関連菌13菌種を同定した。ラットではR. faecisに加え, 酪酸産生菌であるAllobaculum stercoricanis, Eubacterium trutuosumおよびClostridium属が酪酸産生を代替していると推定された。一方, FOS長期摂取時の乳酸濃度の低下は, Bifidobacterium属(80%減)およびLactobacillus属(90%減)の減少によると考えられた。 以上の結果から,FOS摂取ラットの腸内細菌叢は摂取期間の延長に伴い乳酸産生菌型から酪酸産生菌型に遷移する。この腸内細菌叢の遷移が, 有機酸パタンが変化する要因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた菌叢解析を滞りなく進め,FOS摂取ラットの腸内細菌叢は摂取期間の延長に伴い乳酸産生菌型から酪酸産生菌型に遷移することを明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度および本年度の結果から,FOS短期摂取時の腸管透過性の亢進は腸内細菌叢およびその代謝産物である有機酸の変化によって惹起される軽度な粘膜炎症に起因すると考えられた。一方で,長期摂取時には透過性の亢進や異常な菌叢および有機酸パタンは解消されることが明らかとなった。今後は,異常な菌叢および有機酸パタンをを導くことなく適切にFOSが摂取できる食事条件を明らかにすることを目的として基本試料の組成の違いが一連の応答にどのような影響を与えるのかを検討する。
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