2017 Fiscal Year Research-status Report
腸管上皮を考慮した非アルコール性脂肪肝を予防する食物質探索評価系の構築及び解析
Project/Area Number |
17K07796
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Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
薩 秀夫 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (80323484)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝 / HepG2 / Caco-2 / 共培養 / フィトケミカル |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は世界的に患者数が増加している肝疾患であり、NAFLDは非アルコール性脂肪肝炎へと進展し、さらに肝硬変や肝細胞がんへと悪化するリスクがある。またNAFLDは生活習慣病の発症とも関連があることから、本研究では肝疾患に加え生活習慣病をも予防する観点からNAFLDを予防する食品成分を探索することとし、食品成分の腸管吸収をも考慮したin vitro NAFLDモデル系を構築し解析することとした。 ヒト肝由来HepG2細胞を用いてin vitro NAFLDモデル系を構築することとし、HepG2細胞を無血清培地に置き換え、さらに24時間後に無血清培地(control)、遊離脂肪酸のパルミチン酸(PA)、オレイン酸(OA)、2つの脂肪酸を両方加えたMixを添加した無血清培地で培養した。24時間後にOil Red O染色して脂肪滴蓄積を観察し、さらに定量化した。その結果、PA、OA、そのMixを添加したHepG2細胞では脂肪滴蓄積誘導が確認され、特にMix群で最も強く脂肪滴蓄積が観察された。さらに脂肪酸Mix添加後3時間で、IL-8やTNFalphaなど炎症関連分子のmRNA発現亢進が見出された。そこで脂肪酸Mix添加によるIL-8 mRNA発現亢進を抑制するフィトケミカルを探索した結果、クルクミンがIL-8mRNA発現亢進を有意に抑制し、また脂肪酸Mixによる脂肪滴蓄積も抑制する傾向がみられた。 次に、透過性膜上に14日間培養し腸管上皮様に分化させたCaco-2細胞と12 well plateに培養したHepG2を用意した。Caco-2を培養した透過性膜インサートをHepG2を培養したplateにのせ、さらにCaco-2管腔側に脂肪酸Mixを加えて共培養を開始したところ、HepG2に脂肪滴の蓄積が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト肝由来HepG2細胞を用いて、無血清+5%脂肪酸フリーBSA条件下でパルミチン酸およびオレイン酸の混合物を添加することによって、脂肪滴蓄積・IL-8のmRNA発現誘導を指標としたin vitro NAFLD系を構築することができた。また添加する脂肪酸の細胞毒性や、脂肪酸の混合比の最適化、IL-8mRNA発現亢進を評価する際のタイムコースなど、詳細な実験条件も検討をおこない、さらにある程度改善・最適化できたと考えられる。 また構築した評価系を用いてスクリーニングを開始しており、いくつかNAFLDの予防が期待できる食品成分も見出しつつある。 さらに、腸管上皮モデルCaco-2細胞とHepG2細胞の共培養系を構築し、各種共培養条件を改善した。そして腸管上皮モデルの管腔側から脂肪酸を添加した場合に、HepG2細胞における脂肪滴蓄積の誘導が観察され、腸管吸収を考慮したin vitro NAFLD系の構築できたと考えられる。 一方で、マウスやラットを用いたin vivoのNAFLDモデル系についてはいまだ評価系の確立には至っておらず、さらに検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
構築したin vitro NAFLDモデル評価系を用いて、さらに様々な食品成分についてスクリーニングを展開し、脂肪滴蓄積及び炎症関連分子のmRNA発現亢進をより強く抑制する食品成分を探索する。抑制作用が見出された食品成分については、腸管上皮モデルCaco-2細胞層の管腔側から脂肪酸mixと共に添加し、下層のHepG2細胞における脂肪滴蓄積などが抑制されるか検討することとする。 抑制活性が見出された食品成分が野菜・果実などの抽出物である場合は、クロマトグラフィーなどを用いて抑制成分の単離・同定を試みる。一方、見出された食品成分が構造既知の化合物である場合は、その構造類似体を用いて構造活性相関などを検討する。 並行して、マウスやラットを用いてin vivo NAFLDモデル系を構築する。具体的には高脂肪食に加えてフルクトースを溶かした液を自由飲水させることによるNAFLD誘導、あるいはコリン欠乏食によるNAFLD誘導など、いくつかの報告例を参考に検討する。In vivo NAFLDモデル系が構築できた際には、in vitroで見出された食品成分を添加し実際にNAFLD症状を予防・改善しうるか解析する。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに使用したがマイナスにならないよう少し余裕を持って使用したため、最終的にわずかな差額が生じた。 次年度使用分は、翌年度分とあわせて主に物品費として使用する予定である。
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