2018 Fiscal Year Research-status Report
rDNAエピゲノムを調節する新たな栄養素同定とそれによるリボソーム制御の解析
Project/Area Number |
17K07798
|
Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
田中 祐司 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助教 (90453422)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | リボソームRNA転写 / 栄養素 / ニュートリエピゲノム / KDM2A / ヒストン脱メチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、引き続きKDM2Aを調節しうる栄養素候補抽出のスクリーニングを行った。前年度にHigh throughput解析用の実験系を検討し、生細胞DNA量測定を通じた細胞数測定が適切と考えられたため、今年度はこれを用いて、約100種の栄養関連化合物から、① 乳がん細胞株のMCF-7細胞増殖を変化させる化合物、② ①の増殖変化がKDM2A依存的に生じる化合物、③ メトホルミンによるMCF-7の細胞増殖抑制効果を変化させる化合物をスクリーニングした。その結果、前年度までに同定されていた化合物(aKG、コハク酸、ビタミンC、L-バリン、フマル酸)に加え、新たに、①の解析結果から、MCF-7細胞の増殖を変化させる化合物が約10種同定された。また、①の増殖変化が、KDM2A依存的に生じるかを解析したところ、少なくとも3種にその作用が示唆された(②解析結果)。一方、③の解析結果から、メトホルミンによるMCF-7の細胞増殖抑制効果を変化させる化合物の候補を6種同定した。 次に、これら化合物によるKDM2A依存的制御の解析、及びメトホルミンによる増殖抑制効果を変化させる機序を解析した。まず、(A) aKG、コハク酸によるKDM2A制御の解析:前年度までにaKG、コハク酸の細胞内量はメトホルミン誘導性のKDM2A依存的rRNA転写抑制に作用する事を示した。メトホルミンはTCA回路に作用する事から、メトホルミンによる有機酸変動とそれによるKDM2A制御の可能性を検討した。その結果、メトホルミンは細胞内コハク酸量に作用し、それを通じてKDM2A活性を制御する可能性を見出した。(B) MCF-7細胞増殖を変化させる栄養成分の解析:実験②で同定した栄養素の一つを解析した所、細胞増殖を減少させる程度の濃度処理により、rRNA転写を減少させる事が分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画のうちおよそ120種類の栄養関連化合物を含むライブラリーから、MCF-7細胞の増殖を変化させるもの、この変化がKDM2A依存的に誘導されるもの、メトホルミンによるMCF-7細胞増殖減少を変化させるものをスクリーニングした。その結果、初年度までに同定していた物も含め計20種類の栄養関連化合物に上記いずれかの活性がある事が分かった。次に、これらの化合物によるタンパク質合成能への影響を解析する予定であったが、スクリーニング系の構築が完成しなかったため、別の指標である、rRNA転写への影響でタンパク質合成能への影響を評価する事とした。抽出された化合物のうち、2種についてはKDM2A制御を介した、rDNAのエピジェネティックな調節に関わる事が分かった。一方、他の化合物については、rRNA転写への影響を解析中であるが、その中の少なくとも1種類はKDM2A依存的なrRNA転写制御を変える可能性が考えられ、2種は、メトホルミンによるrRNA転写抑制を変える可能性が考えられた。次年度以降にこれらの分子機序、特にKDM2Aを介したrDNAエピゲノム制御の解析を進め、当初の研究目標を達成したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的に研究計画通りに研究を進展させる。得られた結果の判断により実験を柔軟に変更する。本年度のスクリーニングの解析結果から、乳がん細胞株のMCF-7細胞の増殖を変化させた化合物が約10種類、このうち、KDM2A依存的に増殖が変化した物が3種類見つかった。次年度はKDM2A依存的に増殖変化を起こす3種類について重点的に解析を行い、特にKDM2A依存的なrRNA転写制御、及びrDNAエピゲノム制御があるかを解析する。これにより、栄養素を起点とするrDNAエピゲノム制御を通じた新たな細胞増殖制御を明らかにしていきたい。メトホルミンによる細胞増殖抑制効果を変化させる6種類の栄養関連化合物については、まずKDM2A依存的なrDNAエピゲノム制御への作用の解析を行なう。これらの化合物の作用点がKDM2Aでない場合には、それより上流の作用点を模索する実験を行い、化合物がどの作用点でメトホルミン誘導性の機序に関わるのかを明らかにしていきたい。 研究計画上、候補栄養素処理によるタンパク合成能への影響を検討する予定であったが、増殖への影響がタンパク合成能の調節とは限らない為、先にrRNA転写への影響を解析した。その結果として、候補栄養関連化合物にrRNA転写への活性が認められたため、次年度にタンパク質合成能を指標にした、High throughput解析が行えるアッセイ系の構築を行う。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、候補栄養素によるタンパク質合成能の検討(新合成タンパク質量測定)を行う事を予定していたが、研究進展上候補栄養素がrRNA転写に影響するかを明らかにしたのち、タンパク質合成能の解析系を構築した方が良いと考えた為、キットの購入費用とライブラリー化合物購入費用が残った為である。 研究上は、ライブラリー化合物のうち増殖に寄与するものは合計で20種類程度である事が分かった為、個々に購入して解析する事が可能になった。その為、新たにライブラリーを購入する必要はなくなったが、研究計画当初の予想よりも多くの候補化合物が抽出された。そのため、残額は全てこれら候補化合物のrDNAのエピゲノム解析費用に使い、できるだけ多くの候補化合物についてrDNAエピゲノムへの作用を明らかにしていきたい。
|
Research Products
(3 results)