2019 Fiscal Year Research-status Report
亜臨界含水ポリオール処理による希少糖製造技術の開発
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17K07814
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 敬 京都大学, 農学研究科, 助教 (70416311)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 亜臨界水 / 緩衝液 / 希少糖 / 異性化 / 有機酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
加圧下で水を加熱すると亜臨界水と呼ばれる状態になる。亜臨界水は水そのものでありながら反応性が高いため、食品加工への応用が期待されている。亜臨界水にエタノールなどを添加して、副反応を抑制する方法が提案されている。しかし、エタノールは可燃性である上、糖類を溶かしにくい。そこで、亜臨界水中での反応を改良するように計画を改めた。 水にガラクトースを溶解し、亜臨界状態にすることで、希少糖の合成を試みた。また、亜臨界水中では処理後にpHが低下することが見いだされており、これを抑制するために、緩衝液を亜臨界状態に保持して同様の検討を行った。その結果、亜臨界水中と亜臨界緩衝液中では、反応挙動も大きく異なり、緩衝液が存在すると、希少糖(タガトースおよびタロース)の生成率が大幅に上昇した。亜臨界水中では、タガトースの収率は1%に達しなかったが、亜臨界緩衝液中では10%を超える収率が達成できた。また、処理温度を下げることもでき、結果的に省エネルギーで合成できることが判明した。 同様の反応系は他の還元糖でも起こるものと予想された(LBAE転位)。そのため、五炭糖であるキシロースや二糖であるマルトースなどを亜臨界緩衝液中で処理した。その結果、キシロースからは対応するキシルロースやリキソース、マルトースからはマルツロースの生成が確認された。特に、マルツロースの収率は20%を超え、二糖の異性化が起こりやすいことが示唆された。 一方、これらの糖を処理することで、何れの場合にも反応液のpHは低下した。これは有機酸の生成によるものと考えられたが、どのような有機酸が生成しているかは同定できなかった。そこで、次年度(最終年度)は、タガトースの分解に伴う有機酸の生成挙動を解析することで、亜臨界水処理における希少糖合成を合理的に行える反応系を構築する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ガラクトースを亜臨界緩衝液中で異性化させたところ、タガトースが高収率で生成した。これは、亜臨界水中では達成できなかったことであり、緩衝液を用いる手法が各種の希少糖合成の土台ともなった。そして、特許出願も達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
ガラクトースの異性化によるタガトースの生成では、タガトースの分解が問題であったが、緩衝液を用いることによりそれが克服された。しかし、有機酸の生成により、副反応が促進され、希少糖の収率が低下している可能性がある。そこで、希少糖の分解に伴う有機酸の生成挙動を解析することで、亜臨界水処理における希少糖合成を合理的に行える反応系を構築する予定である。
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