2018 Fiscal Year Research-status Report
X線・中性子小角散乱による植物性食品タンパク質構造解析の新展開
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17K07816
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 信浩 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (10303918)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | SAXS / SANS / 小麦タンパク質 / グリアジン / グルテニン / グルテン / コントラスト変調法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、X線小角散乱法(SAXS)や中性子小角散乱法(SANS)を用いて、小麦や大豆など植物性食品タンパク質の凝集体やゲルのナノ構造解析を行い、分子の集合状態や凝集体の内部構造を解明することを目的としている。 平成30年度は、前年度に引き続き、純水中に抽出した小麦タンパク質グリアジンについて、塩化ナトリウム以外の種々の塩を添加した水和凝集体のレオロジー測定およびSAXS測定を行い、塩の種類による凝集構造の相違を調べた。その結果、硫酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩のような多価陰イオンからなる塩の添加によって凝集体が強く凝縮しSAXSにより求められる密度揺らぎの相関長が大きく減少するとともに、レオロジー測定から求められる圧縮弾性率も急激に増大することが明らかとなった。 また本課題では、小麦タンパク質の複合体グルテンの構造を調べるためグルテンのモデル物質となるグリアジン/グルテニン複合体についてコントラスト変調SANSによる構造解析を実施する計画である。平成30年度は、予備実験として、重水水耕栽培により得られたグリアジンの重水素化率を評価するとともに、重水/軽水混合溶媒中におけるコントラスト消失点を評価するため、種々の組成の混合溶媒中においてグルテニンのSANS測定を行った。その結果、重水比率20%程度でグルテニンの散乱強度が極小となるものの完全には消失せず、グルテニン凝集体の微視的な不均一構造に基づく散乱が残存することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度および30年度は、グリアジン水和凝集体の添加塩効果に関する測定がほぼ完了し予定通りの進捗が得られた一方、コントラスト変調SANS測定に関しては、使用する重水素化グリアジンが当初よりも多量に必要となることが判明したため、再度、重水による小麦の水耕栽培とグリアジンの抽出を実施し、十分な試料量を確保する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
小麦タンパク質のコントラスト変調SANS測定に向けて、重水素化グリアジン試料の再調製を行うとともに、グリアジン/グルテニン複合体についてSAXS測定や非重水素化試料のSANS測定を実施し、最適条件を検討したうえで、実際のコントラスト変調SANS測定を実施する。 また、大豆タンパク質のコントラスト変調SANS測定のために、大腸菌発現系によるリコンビナントタンパク質の合成を行い、グリシニンーβ-コングリシニン会合体中の個々のタンパク質の構造解析を実施する。
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Research Products
(5 results)