2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of flow-injection ESR system for evaluation of antioxidant activity of hydrophobic and hydrophilic compounds involved in vegetables
Project/Area Number |
17K07817
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
田嶋 邦彦 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (50163457)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フローインジェクションESR / 脂溶性抗酸化物質 / 抗酸化活性 / アルコキシルラジカル / スーパーオキシドラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、有機溶媒中における脂溶性抗酸化活性物質とスーパーオキシドラジカル(SOR)およびアルコキシルラジカル(RO)の反応速度定数あるいはその比率をスピントラッピングESR法で評価するための新規脂溶性フローインジェクションESR(LFI-ESR)装置の開発と応用研究である。 ROを観測対象とするLFI-ESR装置の開発では、アゾ系ラジカル反応開始剤(AIBN、アゾビスイソブチロニトリルル)の熱分解反応で生成するROとスピントラッピング試薬(DMPO)のスピンアダクト(DMPO/OR)をESR測定対象とする。この反応を流通系で再現するためにポンプ①から酢酸エチルとDMPOを、ポンプ②から酢酸エチルのAIBNの溶液をそれぞれ送液し、70℃の恒温槽内のミキサーにて混合した。70℃で30秒加温する間に生成したDMPO/ORを含む反応溶液は氷浴(0℃)を経由して流通型ESR装置に到達し、得られたESRスペクトルにはDMPO/ORの信号が選択的に観測された。DMPO/ORのESR信号ピーク位置にESR外部磁場を固定した時間掃引ESRとして記録するLFI-ESR法では、ポンプ①からDMPO溶液を注入するたびにDMPO/ORの信号強度が観測され、DMPOの濃度依存性からDMPO/ORの濃度はDMPOの濃度が20 mMで飽和することを見出した。試作したLFI-ESR装置によってビタミンE誘導体および不飽和脂質のROに対する抗酸化活性の評価を達成した。得られた成果は今年度内に論文発表する予定である。 SORを測定対象とするLFI-ESR装置開発では、DMSO(ジメチルスルフォキシド)を測定溶媒として溶存酸素の定電位電解還元で生成するSORを測定対象とする流通系ESRの試作を試みた。すでに流通型電解セルを組み込んだFLI-ESR装置の試作が完了し、今年度は測定諸条件の最適化を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は脂溶性抗酸化活性物質とスーパーオキシドラジカル(SOR)およびアルコキシルラジカル(RO)の反応速度を評価するために、スピントラッピングESR測定法と流通型ESR装置を組み合わせた新規脂溶性フローインジェクションESR(LFI-ESR)装置の開発と応用研究である。ROを測定対象とするLFI-ESR装置の試作と測定諸条件の最適化は昨年度内に完了し、ビタミンE誘導体および不飽和脂質を被検物質とする応用測定を開始している。さらに、抗酸化活性の評価法として、トロロックス(TRX)の抗酸化活性を基準とする相対的な抗酸化活性としてLAREC値(lipophilic arkoxyl radical elimination capacity)の解析法を確立した。さらに、不飽和脂質(リノレン酸)とビタミンE等のフェノール性物質のLAREC値の比率が、不飽和脂質のラジカル反応を抑制する効果に相当することを見出した。LFI-ESR測定法は不飽和脂肪酸のラジカル酸化反応抑制効果を数値化できる有一の手法としての有用性が明らかにされたことは、研究計画の立案時点では予想していなかった研究成果である。 SORを対象とするLFI-ESR装置の開発では、DMPOとSORのスピンアダクト(DMPO/O2)の寿命が予想以上に長いことが判明したことで、測定系の設計と試作は順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
ROを測定対象とするLFI-ESR装置の開発はほぼ完了したので、ビタミンE誘導体、カテコール誘導体および含窒素および含硫化合物のRO消去活性評価を系統的に進める。LFI-ESR法の特徴は有色物質およびその混合物の抗酸化活性が解析可能な点である。具体的には、脂溶性有色物質としてカロテノイド、アスタキサンチンなどの共役二重結合系物質、ビリルビン、ビリベルジンなどヘムの代謝物の抗酸化活性を評価する予定である。特に、ヘム代謝物の抗酸化活性についての研究報告例は皆無であることから、本研究の進展によって脂質の吸収と代謝に重要な役割を果たしている胆汁色素の抗酸化活性を明らかにする予定である。 SORを測定対象とするLFI-ESRの装置開発では、流通型電解セルを組み込んだLFI-ESR装置の試作を継続する予定である。昨年度の研究によって、流通系内で生成するSORの濃度を10から20マイクロモルに下げる必要性が判明した。その解決策として測定溶媒であるDMSO中の溶存酸素濃度を大気下の1/10に低下させる方法を検討している。予備実験の段階、窒素と酸素(含有率2~5%)の混合ガスを使用することで問題解決の目処が立った。本年度は、FLI-ESR装置の改良と測定諸条件の最適化を継続して進める予定である。さらに、SORとDMPOの2次反応速度定数(k1)を算出するために、電解ESR法で調製したSORとDMPOの反応速度の評価にストップトフローESR測定法の応用を検討する。この研究によってks値が評価できれば、本研究で試作するLFI-ESR法によって様々フラボノイド類とSORの2次反応速度定数(ks)値の評価が見込まれる。
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Research Products
(2 results)