2018 Fiscal Year Research-status Report
DOSY-NMR法による硫酸化多糖分析と腸管免疫制御機構に関する研究
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17K07819
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮崎 義之 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40380779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 硫酸化多糖類 / 1H-DOSY-NMR / 腸管免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品に含まれる難消化性多糖類は、多岐にわたる生理機能を有することが報告されており、我々は、褐藻由来の硫酸化多糖であるフコイダンの抗がん作用ならびに免疫増強作用を明らかにしてきた。本研究では、フコイダンによる免疫調節機構を明らかにするため、生理機能の発揮に必要なフコイダンの単位構造の同定ならびにフコイダン受容体の同定を目的として、フコイダンの新規な構造解析手法の確立ならびに免疫細胞に対する機能性解析を進めている。 平成30年度は、核磁気共鳴(NMR)装置を用いた硫酸化糖の新規分別解析法を確立するため、硫酸化単糖の硫酸基に結合して1H-NMRの化学シフト値に変化をもたらす化合物として平成29年度に見いだしたピリジン骨格を有する一連の化合物について、diffusion-ordered spectroscopy (DOSY) 測定による分子量に応じた市販硫酸化オリゴ糖の分離解析を検討し、硫酸化糖と上記化合物の相互作用に伴う拡散係数の変化を見いだした。現在、分別定量解析に適用するための測定条件を検討している。一方、フコイダンの免疫調節作用の作用機構を検討するツールとして蛍光標識フコイダンを作製し、免疫細胞に対する結合性ならびに生理活性の評価検討を実施しており、免疫細胞(特にマクロファージ)の細胞膜表面に本蛍光標識フコイダンが結合し、免疫賦活作用を発揮することを明らかにした。今後は、マウスの腸管免疫細胞に対するフコイダンの結合と生理作用について更に検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、1H-DOSY-NMR法を用いた硫酸化多糖の新規分別解析法の確立を目的として、平成29年度に見いだした硫酸基に特異的に結合する化合物について、DOSY測定に適用するための解析条件の検討に取り組んだ。これまでに、硫酸化糖と候補化合物の相互作用に必要とされる分子構造を明らかにし、一連の候補化合物を用いることでDOSY測定における拡散係数を変化させ得ることを確認した。現在、本法を定量解析に適用するための指摘条件の決定に向けて更なる検討を進めている。 また、蛍光標識フコイダンを用いた機能性解析において、免疫細胞(特にマクロファージ)の細胞膜表面上にフコイダンが結合することで、一酸化窒素(NO)やサイトカイン産生などの細胞機能が亢進することを明らかにした。本蛍光標識フコイダンを用いた培養試験の結果は、フコイダンが細胞膜状の分子と相互作用することで生理機能を発揮することを示しているが、フコイダンの作用標的となる受容体タンパク質の同定には至っていない。今後、マウス腸管免疫細胞を用いた検討を含め、フコイダン受容体の探索ならびに受容体への結合に必要な糖鎖構造の解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
1H-DOSY-NMR法による硫酸化糖の分別解析に適用可能な候補化合物を見いだすことに成功したため、今後は、定量分析への適用に向けて候補化合物の精査と1H-DOSY-NMR法の測定条件の至適化を行う。また、フコイダンをはじめとする硫酸化多糖類の定量分析への適用を検討する。 フコイダンによる腸管免疫調節機構を明らかにするため、引き続き蛍光標識フコイダンを用いた培養試験および動物試験を行い、フコイダンの作用標的となる受容体タンパク質の同定ならびに作用機序の解明に取り組む。また、フコイダンの機能性構造単位の解明に向けたNMRによる構造解析など、研究進捗が遅れている試験項目について検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画に基づいて8割強を使用しており、必要に応じた助成金の適切な使用が出来たものと判断している。 本次年度使用額については、平成31年度において研究試薬などの物品費として使用するものとする。
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