2017 Fiscal Year Research-status Report
測定対象の標準物質を必要としない定量NMRを用いた食品関連成分分析法の確立
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17K07822
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大槻 崇 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (30401011)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 定量NMR / 1H-qNMR / 絶対定量 / アクテオシド |
Outline of Annual Research Achievements |
食品の品質や安全性の評価に関する定量値の質の保証が国内外で重要な課題となっており,様々な食品関連成分に対する信頼性の高い分析法の開発が望まれている.本研究では,食品成分や有害汚染物質などを対象に測定対象化合物の標準物質を必要としない定量NMRを用いた信頼性が高く,高精度,迅速,簡便な食品関連成分の分析法を確立することを目的に検討を行った. 定量NMRによる精密な定量には ①測定対象化合物の定量に用いる定量用シグナルが,食品または食品素材中の夾雑化合物のシグナルと完全に分離していること,②測定対象化合物が重水素化溶媒(重溶媒)に完全に溶解していることが必須である.そこで,平成29年度は食品関連成分を中心に1H NMRを用いた定量NMR(1H-qNMR)測定を行い,各化合物のスペクトルパターン情報の収集,測定溶媒の選定,定量に最適なシグナルの選定を行った.また,各化合物の照射パルス遅延時間,積算回数など測定条件の最適化を実施した.これらの検討結果を基に,ポリフェノールの一種であるアクテオシドを対象に分析法の確立に関する検討をさらに実施した.その結果,ゴマ葉粉末中の当該化合物の定量については,重水素化溶媒による簡便な抽出操作を行うのみで,その定量が可能であることが判明した.また,得られた定量値は従来法であるLC法で得られた定量値と有意な差はなく,本法はゴマ葉粉末中のアクテオシド分析法として有用であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,食品関連成分を中心に1H-qNMRのスペクトルパターン情報を収集するとともに,1H-qNMR測定における照射パルス遅延時間,積算回数など各種測定パラメータの最適化に関する検討を実施した.これらの検討結果は,今後,食品,食品素材中の測定対象成分の定量法を確立する上で基盤となるデータであり,当初の計画どおりこれらの検討を進めることができた.さらに,今年度はポリフェノールの一種であるアクテオシドを対象とした分析法の確立に関する検討にも着手し,特に,ゴマ葉粉末に含まれる当該成分の分析において,本法は非常に有用であることを従来法との比較より実証することができた.以上より,現時点において,本研究はおおむね順調に遂行できているものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,まず,今年度の成果を基に加工食品中のアクテオシド分析法の検討を行い,本法の性能を評価する.また、食品関連成分の1H-qNMRスペクトルパターン情報の収集,1H-qNMRの適用性の評価等を引き続き実施し,食品関連成分を対象とした1H-qNMRによる定量法の確立について検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
食品関連成分の1H-qNMRスペクトルパターン情報の収集において、当初の予定より安価に測定対象成分の試薬が入手できたため,使用額の変更が生じた.平成30年度は,平成29年度に引き続き食品関連成分のスペクトルパターン情報の収集等を行うとともに,平成29年度に確立した分析法の適用性拡大に向けた検討を行う予定である.平成30年度は,これらの検討で必要な測定対象物質の標準品,各種重水素化溶媒,消耗品の購入,研究成果の発表等に必要な経費に充当する予定である.
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