2017 Fiscal Year Research-status Report
台風による森林被害の予測精度向上をめざした立木間の動的相互作用の解明
Project/Area Number |
17K07836
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上村 佳奈 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (40570982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南光 一樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 森林防災研究領域, 主任研究員 (40588951)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 森林風害 / 立木振動 / 立木衝突 / 強風 / 歪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は台風などによる強風時の立木間の動的相互作用(立木の振動、衝突など)についてまず野外観測を実施し、モデル化することで、林分の耐風性予測精度の向上を目指すことを目的としている。平成29年度は野外観測を中心に実施した。まず調査プロットを2つに分け木の伐採を行い、1/2を無間伐(プロットI)、1/2を間伐プロット(プロットII)とした。観測の準備として観測用センサーの調整とデータロギングシステムの開発を行った。観測センサーは、各立木2方向(北と東側)において増幅器に接着した歪ゲージを地上から20cmの高さに設置した。さらに樹冠の揺れを計測するため、慣性計測センサーを各立木に1個北方向、地上から6mの位置に設置した。データ回収についてはセンサーの数が多いため、多チャンネルかつ安価なシステムを開発した。具体的には小型コンピュータRaspberry Pi3を複数個用いて、Pythonプログラムによって各センサーからの信号を記録するシステムを構築した。さらに歪ゲージのオフセット用半固定抵抗をシステムに組み込むことで、毎回のデータ回収時における調整を可能にした。超音波風速計を2種類のプロットの中間にマストをたてて設置した。三杯風速計はプロットの外に設置した。現時点で36本(プロットIに24本、プロットIIに12本)の立木に108個のセンサーの設置を完了した。さらに歪ゲージからの出力を根元の回転モーメントに変換するため、対象木をウィンチで引っ張り変換係数を算出するための試験を実施した。これまでのところ33個の歪ゲージについての試験が終了している。観測は1月から開始しており、強い風が吹いた場合、無間伐、間伐プロットの林分では周辺木との衝突有無によって木の振動傾向が異なることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
木の振動観測に関するセンサーとデータロギングシステム、および風速計2台の設置が終了し、観測を開始した。課題の中心的な観測の準備を終了し観測を開始したことから、本研究課題はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、立木の振動についての観測を継続する。さらに観測データが蓄積されてきたことから、立木の振動、衝突について風況データと合わせて傾向を分析する。また当初計画では根の重なりの測定と土壌水分の測定があったが、本年度は実施しなかった。その理由として、本研究の中心である木の振動観測準備に時間が当初計画以上にかかったため、こちらを優先したためである。根の重なりについては継続の測定は必要としないことから、来年度以降の実施へと変更する。土壌水分の測定については来年度から測定を開始する。
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Causes of Carryover |
当年度予定していた出張(森林総研から千代田試験地)1回分が天候不順のため中止になったことから次年度使用額が生じた。この分の出張については次年度実施する。
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