2017 Fiscal Year Research-status Report
極東アジア産樹木葉枯性病害病原菌の分類学的再検討と種多様性
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17K07837
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中島 千晴 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (20378318)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Tubakia / Endophyte / Plant Pathogen / Fungal biodiversity / Taxonomy / Fagaceae |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、極東アジア産樹木葉枯性病害病原糸状菌のタイプ標本の検討・指定を行い、またその派生株を用いて形態観察、多遺伝子座分子系統解析、宿主等の情報を加えて、分類学的検討を行っている。本年度の成果は海外の共同研究者と協力し日本産の樹木葉枯性病原菌ないし内生菌として知られるTubakia属菌の基準標本とその由来株を用いて網羅的な検討を行った。結果、日本産Tubakia属菌は知られているよりも非常に多様性が高いことが明らかになった。さらに、Tubakia属をMelanconiellaceaeから独立させ、新科Tubakiaceae内にこれまでのTubakia属に加え、新属Apiognomonioides (type species: A. supraseptata), Involutiscutellula ( l. rubra), Oblongisporothyrium (O. castanopsidis), Paratubakia (P. subglobosa), Racheliella (R. wingfieldiana), Saprothyrium (S. thailandense), Sphaerosporithyrium (S. mexicanum)を提案、新種を含め24の新規分類群を提案した。これにより分類が曖昧なブナ科の温帯広葉樹の病原菌、内生菌の研究が加速すると思われる。 これら樹木寄生性土壌病原菌Fusarium属菌の研究の過程で分子系統関係から、従来の薬剤抵抗性系統の検出技術よりも簡便、迅速に検出できる手法を見いだし、ムギ類赤かび病菌を例に成果を学術雑誌に投稿、受理された。 また、インドネシア産ウドンコ病菌の多様性と系統に関する研究を行い、1新属を提案する論文を投稿する予定である。 この他に支援を受けた研究成果として国際シンポジウム(2017年8月オランダユトレヒト), アジア菌学会(2017年10月ベトナムホーチミン)にてべと病菌の生物バーコーディングとFusarium属菌の薬剤抵抗性系統についてポスター発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
海外の共同研究者との協力により加速度的に研究が進展し英文原著研究論文を1本発表することができた。この成果は海外の有力研究所が出版し大手出版社が保有する新規のオープンアクセスジャーナルに掲載されたことから、充分な引用が期待され、すでに450件を超えるダウンロードが記録されている。また、支援を受けた研究の過程で得られた研究を基に分子系統関係を把握した上で特定の菌系統を検出する技術を確立し、1本が受理された。さらに新たに海外の協力者を得た(マレーシア)ことで日本産葉枯性病原菌の研究が加速することが期待できる。また、国際学会にてポスター発表を3本行った。以上のことから、当初の計画以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の推進方策として当初の計画通りに着実に推進する。 29年度と同様に、基準標本の形態学的検討とタイプ由来株の分子系統解析、そして両結果を統合した分類学的研究を行う。菌群は更に拡大し、枝枯・軸腐病菌(Fusicoccumとその関連属菌)に拡大する。また、日本産の標本および菌株の分類学的位置づけの確認のため、マレーシアとの共同研究を新たに開始し、現地での標本の採集を開始する。これらの成果は、すでに投稿準備中のインドネシア産うどんこ病菌に関する報告を早急に投稿すると共に、関連学会にて積極的に発信する。また、近年注目されているLAMP法を用いて、昨年度申請者らが他の資金の援助と合わせて開発した生物バーコーディングと分子系統関係に基づいた早期検出プライマーセットの開発を枝枯・軸腐病菌(Fusicoccumとその関連属菌)について開始する。
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Causes of Carryover |
理由: 研究の効率化を行い試薬使用量を削減できた。また、投稿料も必要の無いオープンアクセスジャーナルへ投稿し受理されたことで費用を抑えることが出来た。 使用計画: 計画よりも一段階先に進めたことで、より幅広く実施する分子系統解析実験に使用する予定である。
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