2018 Fiscal Year Research-status Report
遺伝的効果とエピジェネティック効果の評価によるブナ機能形質の多様性予測方法の開発
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17K07838
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
鳥丸 猛 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (10546427)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ブナ林 / 遺伝的変異 / 実生 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブナのエピジェネティク変異を定量化するための手段として、次世代シークエンサーを用いたゲノム中のシトシンのメチル化の程度を網羅的に検出するHELP-tagging法を確立することを目的として、ブナのドラフトゲノムの作成を試みた。三重大学圃場に植栽されているブナから50kbp以上の長鎖DNAを抽出し、10×Chromiumを用いたPhasedゲノムライブラリーの作成とNovaseq6000を用いた150bpペアエンドによるシークエンシングを外部委託した。その結果、総塩基数344,821,524,300bp、リード数2,298,810,162リードであった。さらに外部委託したSupernovaによるアセンブリの結果、アセンブリサイズは341,996,530bp、カバレッジは×44、スキャホールドN50は369,236bp、推定ゲノムサイズは530Mbpであった。 次にブナ集団内で検出される表現形質の変異の遺伝的基盤となるデータを整備するために、研究代表者が管理しているブナ林の固定調査区の一つである白山刈込池周辺のブナ林(福井県大野市)において、ブナ成木の遺伝的構造を調査した。その結果、マイクロサテライトマーカーと次世代シーケンサーを使ったMig-seq法で検出されたSNPにおいて強い遺伝的構造が認められ、ブナの示す風媒・重力種子散布の種特性がその構造化の原因として示唆された。また、ブナにおいて乾燥応答に関わる候補遺伝子であるFcMYB1603も遺伝的構造を示したが、それはブナの種特性から予想される遺伝的変異の空間分布を逸脱するものであった。さらに、FcMYB1603の遺伝子型の空間分布と林床のササの被度の間に有意な相関関係が認められ、ササがあまり被覆していない場所に低頻度の対立遺伝子をもつブナ成木が偏って生育していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に採取された種子を発芽試験に供したところ、発芽が全く認めらなかったため、ブナ実生を用いたストレス処理実験の進捗は滞っている。一方、ブナ林の表現形質の変異のソースとなる遺伝的データは計画通りに整備することができ、特に従来知られていた樹木の花粉・種子散布特性に起因しない、環境条件と遺伝子型の相関関係に基づく遺伝的構造化のメカニズムの一端を提示することができ、当初の計画段階では予想していなかった新たな知見を得ることができた。また、エピジェネティク変異を調査するための基礎データとしてブナのドラフトゲノムを得ることができた。以上のように、遺伝的・エピジェネティク的情報は当初の計画通り整備することができたものの、ストレス処理実験に遅延が生じているために、進捗状況としてはややおくれているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
種子の採取については、今年度の秋に再び採取するとともに、もしもブナ天然林が凶作であった場合に備え、森林総合研究所林木育種センターに保存されている種子の購入を検討する。一方、すでに森林総合研究所の研究者に発芽処理を依頼しており、発芽後の実生を三重大学の人工気象器に移植して生育させる予定である。それらの実生を用いて、計画にあるように異なる水分条件と温度条件で実生を生育させ、それらの形質を測定するとともに、処理前の子葉と処理後の葉からゲノムを抽出して、遺伝的変異とエピジェネティク変異を明らかにする。 昨年度に作成したドラフトゲノムはブナの全ゲノムの約6割をカバーしており、今年度はロングリードを使ったgap closingを実施して、ドラフトゲノムの補完と拡充を実施する予定である。
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Research Products
(4 results)