2017 Fiscal Year Research-status Report
Study on the mechanism controlling dissolved organic matters and nitrate concentrations in forested watersheds
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17K07839
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 崇仁 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (50202396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舘野 隆之輔 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60390712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 森林集水域 / 渓流水質 / 溶存有機物 / 硝酸塩 / 土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
芦生研究林における渓流水質調査結果から、特徴的な2つの小集水域を選定し、渓流水の湧水点、集水域下端と両者の中間の3点で渓流水を採取した。また、渓流水を採取した3地点からそれぞれ尾根に向かう側線上に3点を設けて、土壌採取を合計9地点で行った。2集水域のうち渓畔帯が見られた集水域では、渓畔帯の1点を加えて10地点で採取した。各地点において、4ポイントで有機物層(A0層)の厚さを測定し、有機物層の採取を行った後、土壌のA層を0cmから20cmまで5cmごとに4層採取した。4ポイントの試料は混合して、コンポジットサンプルとして氷冷して実験室に持ち帰った。土壌試料は、篩いにかけて石や植物根などを除去した後、含水率、有機態炭素、全窒素含量の他、水抽出性の溶存態有機炭素(WDOC)と硝酸塩(NO3-)濃度、28日間25℃での無機化速度、硝化速度、硝化率を測定した。結果を、地理情報システム(GIS)ソフトにて集水域上に等高線表示をし、空間分布を解析した。WDOCとNO3-の濃度レベルは、2つの集水域間で異なり、また、同じ集水域内でも位置によって異なっていたが、渓流から尾根へ向かう側線上での変化を見ると、WDOC濃度は、どの側線においても尾根から渓流に向かって低下し、NO3-濃度は逆に増加するという共通した傾向が見出された。これらのことは、土壌中のこれらの物質濃度を規定するメカニズムが、渓流水質の形成メカニズムと相同である可能性を示唆するものである。 これらの成果をもとに、京都大学大学院農学研究科の大学院生1名が、修士論文「森林集水域内の渓流水中における溶存有機炭素および硝酸態窒素濃度の形成要因 -集水域土壌の化学特性について-」をとりまとめ、修士学位を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
芦生研究林内の小集水域における土壌採取を行い、その化学特性の分析を終了し、空間的特徴と渓流水質との関係性を明確にした。土壌微生物群集の解析用の試料も採取し、凍結保存しており、来年度から分析を実施できる状態となった。次年度に北海道研究林での調査に力を入れることで、対象2地域のバランスがとれるものと思われるので、全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
土壌分析の実施方法、解析方法がほぼ確定したので、芦生研究林において土壌分析の実施地点を増やすとともに、北海道研究林においても同様の分析を行う予定である。また、平成29年度に採取した土壌試料を用いて、有機物の無機化、硝化を担う土壌微生物群集の遺伝子解析を実施し、土壌質との関係を明らかとする。集水面積、平均傾斜、急傾斜面積率などの地形指標と土壌質との関係などを統計解析し、土壌質、渓流水質の形成にかかわるパラメータの抽出を行う。
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