2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on the mechanism controlling dissolved organic matters and nitrate concentrations in forested watersheds
Project/Area Number |
17K07839
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 崇仁 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (50202396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舘野 隆之輔 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60390712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 森林集水域 / 渓流水質 / 溶存有機物 / 硝酸塩 / 土壌微生物群集 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
芦生研究林の2つの小集水域において、2017年度では、各集水域の片側斜面のみの調査を行ったが、2018年度は、両斜面での試料採取を実施した。採取時期は、前年と同様秋季であり、繰り返しのデータが得られたものと考えている。また、両斜面を調査したことから、集水域斜面内部での土壌質の分布の傾向をより明確に見いだせるであろう。化学分析は、現在進行中である。また、凍結保存した土壌資料を用いて、微生物群集解析を実施した。DNA分析により、総細菌類、古細菌類、アンモニア酸化細菌、アンモニア酸化古細菌、真菌類の相対数を測定した。その結果、アンモニア酸化細菌とアンモニア酸化古細菌の数は、斜面上部の尾根部で少なく、谷部で多くなるという一般的傾向が見られた。とくに、アンモニア酸化古細菌の場合、尾根部で極めて少ないことが分かった。このアンモニア酸化微生物の空間分布は、土壌中の硝酸塩濃度の空間分布と整合性のあることが分かった。総細菌類の分布も、アンモニア酸化微生物とほぼ同様で、あるが、尾根部と谷部の差はそれほど大きくなかった。一方、真菌類については、尾根部と谷部で少なく、中間部で比較的多いという異なる空間分布を示すサイトの多いことが分かった。有機物分解の主役が、尾根、中間、谷部で、細菌類と真菌類で変動している可能性が示唆された。 2018年度に採取した土壌試料の化学分析及びデータ解析の多くは進行途上であるが、小集水域内における土壌質と微生物群集の空間分布には一定以上の相関関係のあることが示唆され、ひいては、渓流水質に反映しているという作業仮説を補強する結果が得られていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年9月の台風21号により、調査地である芦生研究林内の林道が被災し、しばらくの間林内に立ち入ることが禁止された。そのため、当該年度の試料採取が大幅に遅れたことにより、土壌分析も遅れ、年度内に完了することができなかった。また、北海道研究林における調査もこの影響で実施する時機を逸してしまった。土壌微生物群集解析については、2017年度に調査し、凍結保存していた土壌資料を用いて実施することができ、興味深い空間分布を見出すことができた。以上のことから、予定した計画よりやや遅れているものの、着実に進捗しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の前半で、2018年度に採取した試料の土壌質分析を実施すると共に、芦生研究林での繰り返し土壌調査と北海道研究林における新規土壌調査を7月頃までに実施する。また、芦生研究林に関しては、秋季にも土壌調査を実施することで、研究計画3ヵ年において、秋季の繰り返し調査を3回行うことができ、土壌質の空間分布の傾向をより明確にすることができるものと考えている。微生物群集解析に関しては、全ての土壌試料で実施することは、時間的に困難と思われるが、サイト数を限定すると共に微生物量の多い土壌表層を中心に分析することで、空間的変動の様相を把握することに努めたい。1-2年次の結果から、非常に興味深い土壌質及び微生物群集の空間分布の存在が示唆されており、繰り返しの調査を実施、また、急峻な斜面からなる芦生研究林の小集水域の結果を、よりなだらかな斜面で構成されている北海道研究林の結果と比較することにより、作業仮説の検証に向けて前進できるものと考えている。
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