2017 Fiscal Year Research-status Report
現存有名クロマツ植栽林の遺伝的保全のための採種戦略の確立
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17K07853
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
岩泉 正和 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所林木育種センター関西育種場, 主任研究員 (50391701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 敦史 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10360471)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クロマツ / 遺伝的多様性 / 核マイクロサテライト(SSR) / 有名松原 / 採種戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、現存クロマツ林内での成木の遺伝的変異が次世代に担保されるために必要な種子プールの得かた(採種戦略)について検討する。平成29年度は、福岡県福岡市に所在する有名松原「生の松原」(九州大学演習林)を調査地として選定した。現存する成木集団の遺伝的評価のため、集団内のクロマツの生育範囲を網羅する形で、170個体から針葉を採取した(次年度に追加サンプリングを行う予定)。次世代の植栽種苗の遺伝的評価のため、上記成木のうち96母樹から球果を採取し種子を得た。核マイクロサテライト(SSR)マーカー8座(既開発済み)に基づき、成木と各母樹由来の種子についてDNA抽出および分析に着手した。また、他の遺伝マーカーによる評価も試みるため、既存のクロマツのゲノム情報を利用して、EST-SSRマーカーおよび一塩基多型(SNP)マーカーの開発に着手した。 また本課題の実施に先立ち、国内現存クロマツ資源の多様性把握のため、全国各地の有名松原を対象にDNA分析を行い、遺伝的変異の現況を調査した。その結果、一部集団では近隣地域と全く異なる変異が見られ、植栽林樹種特有の広域地域間での種苗流通の事実が認められたとともに、全体的には西南日本~東北日本にかけて連続的な地理的遺伝構造が観察され、各地域集団が少しずつ異なる独自の遺伝的変異を保有することが明らかになった(Iwaizumi et al. 2018)。種内全体の遺伝子保全のためには、個々の地域集団レベルでの保全に取り組む必要があることが示唆され、本研究ではその具体的手法の検討に相応する課題であることを再確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って現地調査、サンプリングおよび分析に着手し、初年度の目標を概ね達成できた。また上述の国内現存クロマツ有名松原の核SSRマーカーに基づく遺伝的変異の知見を英文としてまとめ、国際誌Forest Ecology and Management誌に投稿し、掲載させることができた(Iwaizumi et al. 2018)。国際誌への掲載により、本課題の基盤となる研究成果を広く世界の関連研究者に発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も引き続き、サンプリングした成木と各母樹由来の種子のDNA分析を進める。得られた遺伝子型データより、種子の遺伝的多様性に母樹のサイズや生育環境等の要因が与える影響について解析・評価に着手する。プログラミング等により、採種母樹数の増加や母樹の選定基準等に伴う次世代(種子プール)の遺伝的多様性の推移について解析し、成木の遺伝的変異に到達するような最低限の採種母樹数について評価する。また、EST-SSRマーカーおよびSNPマーカーの開発を進め、得られたマーカーの試用・スクリーニングおよび実際の多様性評価に着手する。
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Causes of Carryover |
現地調査・サンプリングを当初2回計画していたが、1回で所定の調査を終えられたため、旅費・謝金等について執行額を節減できた。 次年度は節減できた助成金を利用して、遺伝マーカー開発のためのDNA分析試薬費等へ資金の投入を増加させたい。
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