2018 Fiscal Year Research-status Report
現存有名クロマツ植栽林の遺伝的保全のための採種戦略の確立
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17K07853
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
岩泉 正和 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (50391701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 敦史 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10360471)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クロマツ / 有名松原 / 植栽林 / 遺伝的多様性 / 保全 / 採種戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
福岡県福岡市に所在する有名松原「生の松原」(九州大学演習林)において、現存する成木集団の遺伝的評価のため、集団内のクロマツの生育範囲を網羅する形で、前年度に引き続き130個体から針葉を採取した(前年度のサンプリング数と合わせて計300個体)。次世代の植栽種苗の遺伝的評価のため、上記成木のうち、様々な個体サイズ級から30母樹を選定し、球果採取を行い種子を得た(前年度と合わせて重複除いて計100母樹家系)。核SSRマーカー7座(既開発済み)に基づき、成木と各母樹由来の種子を対象としてDNA抽出および分析を進めた(シーケンサによる電気泳動は九州大学で実施中)。得られた成木集団と各母樹由来の種子プールの遺伝子型データより、遺伝的多様性の解析・評価に着手した。また、他の遺伝マーカーによる評価も試みるため、既存のクロマツのゲノム情報を利用して、EST-SSRマーカーの開発を進めたとともに、マーカーの試用分析に着手した。 種子プールの遺伝的多様性の高い採種母樹について検討する上で、多様性の違いに影響しうると考えられる各母樹周辺の林分構造(本数密度、個体サイズ等)について把握するため、クロマツ林の生育範囲を5×30mのプロットに区分し、各プロットの全クロマツ個体(胸高直径5cm以上)を対象として毎木調査に着手した(九州大学と連携)。これまでに調査したプロットについて解析した結果、集団内は個体密度や個体サイズ(齢級)の異なるエリアがモザイク状に配置されており、林分構造は採種母樹間で大きく異なっていることが考えられた(Mukasyafら 2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って現地調査、サンプリングおよび分析・解析を進め、2年度目の目標を概ね達成できた。また上述の成木集団において、集団内の林分構造等の解析結果をとりまとめ、国内学会において成果発表することができた(九州大学で主担当:Mukasyafら 2019)。
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Strategy for Future Research Activity |
成木と各母樹由来の種子のDNA分析を進め、得られた遺伝子型データより、採種母樹間での種子プールの遺伝的多様性の違いや、母樹のサイズや生育環境(林分構造)等の要因が与える影響について解析・評価を進める。プログラミング等により、採種母樹数の増加や母樹の選定基準等に伴う種子プールの遺伝的多様性の推移について解析し、種子プールにより成木の遺伝的多様性が担保されるような最低限の採種母樹数等について評価する。また、他DNAマーカー(EST-SSRマーカー他)の開発を進め、得られたマーカーの試用・スクリーニングを経て多様性評価を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度は分担者機関(九州大学)の大学移転等によって高額な実験試薬の使用量が予定より少なくなったことから、若干の余剰が発生した。平成29年度の予算節減により発生した余剰額も含め、次年度への余剰として発生した。 次年度は節減できた助成金を利用して、新たな遺伝マーカーを用いたDNA分析試薬費や、データ解析、成果公表等へ資金の投入を増加させたい。
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