2017 Fiscal Year Research-status Report
Adaptive introgression in coastal broadleaf trees: detection of salt-torelant genes using interspecific hybrid families
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17K07859
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
永光 輝義 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員等 (30353791)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 浸透交雑 / 耐塩性 / 海岸林 / 種間交配家系 / 広葉樹 |
Outline of Annual Research Achievements |
カシワは、北日本の海岸に自生する広葉樹で、耐塩性が高い枝の形質を持つ。北海道にあるカシワの北限より北では、この耐塩性形質を示すミズナラが生育する。この現象は、耐塩性形質をもたらす遺伝子がカシワからミズナラへ交雑によって浸透し、海岸林で耐塩性の高いミズナラが自然選択された適応的浸透によると考えられる。そこで、この仮説を検証するため、1)カシワとミズナラとの種間雑種F1同士の交配から得られるF2を用いて耐塩性形質の遺伝的変異を明らかにし、2)それらのF2を海岸林へ移植してその遺伝的変異が適応的であることを示し、3)カシワの北限より北に自生する耐塩性形質を示すミズナラがその遺伝的変異を持つことを確かめる。 カシワとミズナラとの種間雑種F1が、北海道立総合研究機構林業試験場(三笠市)と森林総合研究所林木育種センター北海道育種場(江別市)にある。前者はカシワを母、ミズナラを父とし、後者はその逆の種間交雑に由来し、それらの親はすべて別個体である。それぞれの家系のF1は全姉妹の複数個体からなる。それらのF1は、カシワとミズナラとの中間的な形質を示した。それぞれの家系のF1から花粉親1個体と種子親複数個体を選んで相互に交配し、秋に成熟した種子を採取した。これらの種子から同一環境で2年生まで苗を育成している。 三笠市と美唄市の北海道立総合研究機構林業試験場には、北海道の海岸や内陸の産地から採種したカシワとミズナラの植栽地がある。これらの表現型をF1と同様に測定した。同じ植栽地において、カシワの北限より北の海岸のミズナラと内陸のミズナラとは表現型が異なり、耐塩性形質の違いは遺伝的変異によると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カシワとミズナラとの間で異なる形質や海岸ストレスへの耐性に関わる形質の測定方法を確立した。また、種間雑種F1同士の交配とそれらのF2の育苗の方法を確立した。ただし、平成29年度にF2は約50個体しか作成できなかった。 形質の遺伝的変異の評価には同じ環境に植栽された個体の形質を比較する必要がある。そのため、カシワの北限より北の海岸に自生する耐塩性形質を示すミズナラとその形質を示さない内陸のミズナラが植栽されている試験地を確保した。このように、研究目的を達成するための材料と方法が確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
交配と育苗の方法をさらに改善し、平成30年度に100個体以上のF2を得る。結実の豊凶に備えて、3年間(平成31年度まで)同様に交配し、合計200個体以上のF2を得る予定である。森林総合研究所北海道支所(札幌市)の圃場で2年生まで育成し、遺伝子型と表現型の測定に供する。遺伝子型は、ddRAD-seq(二重消化制限酵素切断断片DNA配列)のSNP(一塩基多型)を用いて決定する。育苗の1年目と2年目に、F1と同様にF2の表現型を測定する。研究期間内(平成33年度まで) にその測定を終える。 同様の植栽地がある中川町と稚内市の北海道立総合研究機構林業試験場でも表現型を測定する。これらの植栽地の個体のうち、耐塩性形質に遺伝的変異を示す個体についてF2と同様に遺伝子型を決定する。
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Causes of Carryover |
交配と育苗の器具および遺伝分析の試薬を必要量購入したが、今年度に得られたF2種子数が予定より少なかったため、未使用額が生じた。 次年度はより多くのF2種子を作成する予定なので、未使用額はその交配と育苗の経費に充てる。
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