2018 Fiscal Year Research-status Report
マツ枯れの病原線虫はどのように進化してマツノマダラカミキリと結び付いたのか
Project/Area Number |
17K07860
|
Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
前原 紀敏 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (20343808)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | マツノザイセンチュウ / 進化 / 昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
マツノザイセンチュウを含むBursaphelenchus属線虫の分子系統解析により、ゾウムシやキクイムシに分散型3期幼虫というステージで運ばれる線虫から、カミキリムシに分散型4期幼虫で運ばれるマツノザイセンチュウ近縁種が進化し、さらに、マツノザイセンチュウ近縁種の中で、広葉樹から針葉樹へとカミキリムシの乗り換えが起こった結果、マツノザイセンチュウが現れたと考えられている。研究代表者は、「カミキリムシに運ばれること(便乗)に特化した分散型4期幼虫の誕生が、マツノザイセンチュウ(B. xylophilus)とマツノマダラカミキリを結び付けた」という仮説を立てた。本研究では、研究代表者が考案した人工蛹室を用いて線虫と昆虫の関係を調べることで、この仮説を検証し、マツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリの関係の進化的な成立過程を解明することを目的とする。今年度は以下のことを明らかにした。 「マツノザイセンチュウ近縁種であるB. douiがビロウドカミキリによって広葉樹から針葉樹へと運ばれてきた後に、Monochamus属のカミキリムシへと乗り換えた」という考えを検証するために、広葉樹と針葉樹の両方を利用するビロウドカミキリとヒメヒゲナガカミキリ、針葉樹を利用するカラフトヒゲナガカミキリ、及びアカマツ枯死木から分離されたB. douiを人工蛹室でマツノマダラカミキリと共存させた。その結果、前2アイソレイトよりも後2アイソレイトの方がマツノマダラカミキリによく乗り移り、針葉樹のみに関連する B. doui では、広葉樹に関連する B. doui よりも、マツノマダラカミキリに対する親和性が高まっていた。これは、上記の考えを支持する結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたB. doui 4アイソレイトのマツノマダラカミキリへの親和性の調査について、計画通り調べることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、令和元年度はマツノザイセンチュウのクロコブゾウムシへの便乗を調べる。その際用いるクロコブゾウムシは野外の材から採集する予定であったが、平成30年度に得られた成虫に交尾・産卵させることができたため、卵から育てた次世代を用いることに研究計画を変更する。
|
Causes of Carryover |
平成31年4月1日付の研究代表者の人事異動に伴い3月末の学会参加を見合わせたことや生物顕微鏡用対物レンズの定価からの値引きにより、次年度使用額が生じた。繰越額は物品費に充てる。
|
Remarks |
前原紀敏 (2018) マツノザイセンチュウをはじめとするBursaphelenchus属線虫の媒介者. みどりの東北 174:5
|
Research Products
(2 results)