2017 Fiscal Year Research-status Report
Risk assessment of decay on Sakhalin-fir consequent of wounds on stems or roots injured by logging machines
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17K07861
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
山口 岳広 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員等 (00353897)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トドマツ / 林業機械作業 / 腐朽菌 / 幹・根系損傷 / 非破壊腐朽探査 / 傷面積 |
Outline of Annual Research Achievements |
トドマツの幹・根系の傷から生じた腐朽の進展状況と、侵入した腐朽菌を分離・同定し関与する腐朽菌を明らかにするため、トドマツ幹・根系の損傷部位339箇所について,傷から発生した腐朽の進展距離を非破壊的腐朽探査機器を用いて調査し進展速度を推定した。併せて損傷部から幹・根系に侵入した腐朽菌の分離を行い、培養菌株を用いて形態やDNA 塩基配列の相同性等から種の同定を試みた。 トドマツ幹・根系の傷から侵入した腐朽の進展距離は非常にばらつきがあり、傷が発生しても腐朽が生じていないものから、軸方向の距離で100cmを超える進展長を示すケースも数例見られるなど多様であった。この進展距離を傷発生後の経過年数(=間伐作業後からの経過年数)で除した値を年間の進展距離とすると、最大で20cm/年の値を示していた。全体的な傾向として幹・根の傷ともに傷面積が大きいと腐朽の進展長も大きくなる傾向が見られた。また、根の傷面積は幹の傷面積より小さいが,同じ面積であれば根のほうの腐朽進展長がより大きい傾向もあった。これらのことから、傷面積が腐朽の進展に影響を与えていることが示唆された。 幹・根の傷から腐朽が進展した場合と腐朽が進展しなかった場合のそれぞれの傷面積を比較すると、実際に傷から腐朽が侵入・進展している場合は腐朽が進展しないケースよりも傷面積が大きい傾向があった。 分離された腐朽菌としては、既に報告のあるレンガタケが幹・根の傷ともに発生した傷の約5%、傷がもたらした腐朽のうちおよそ1割を占めていた。分離される頻度は非常に低かったが他にカワラタケなどの腐朽菌も分離され、多様な腐朽菌がトドマツ幹・根系の傷から材内に侵入していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トドマツの幹・根系の傷から生じた腐朽の進展状況と、侵入した腐朽菌を分離・同定し関与する腐朽菌の分離同定については、これまでの研究蓄積もあったことからほぼ予定どおりの調査と試料数を確保することができた。腐朽菌の同定に関しては、形態的特徴のある腐朽菌が少なくDNA抽出を行って塩基配列を解析しデータベース上での検索が主な手法になり、一部DNA抽出や配列解析がうまくいかなかったサンプル、配列検索で相同性の高い種がなかったものがあったが、大多数のサンプルは腐朽菌の種を同定できた。 意図的に林業機械で損傷したトドマツからの腐朽の進展と腐朽菌の分離については、トドマツのサイズが大きく伐採・切断と試料の処理方法に手間がかかり時間を要したため、初年度は12本の処理にとどまったが、データとしては十分なものが得られた。手法がほぼ確立したので次年度はもう少しスムーズに処理ができると考えている。 腐朽菌の接種に関しては既に行っているが、新たに分離された腐朽菌で比較的腐朽力が強いと予想される一種を接種するために接種源の培養を行っており、次年度早々に接種を行う予定である。 以上のようにほぼ予定した調査・実験については実行されているので、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初予定した研究計画に沿って研究を推進する。すなわち今年度も昨年度と同様に、トドマツの幹・根系の傷から生じた腐朽の進展状況と、侵入した腐朽菌を分離・同定し関与する腐朽菌を明らかにするため、トドマツ幹・根系の損傷部位から発生した腐朽の進展距離を非破壊的腐朽探査機器により調査し進展速度を推定する。併せて損傷部から幹・根系に侵入した腐朽菌の分離を行い、培養菌株を用いて形態や生理特性、DNA塩基配列の相同性等から種の同定を試み、関与する腐朽菌類を明らかにする。また、林業機械で意図的に損傷させたトドマツはまだ残存していることから伐採・解体して腐朽の進展と腐朽菌を上述した方法で同様に調査し腐朽の進展状況と、侵入した腐朽菌を分離・同定し関与する腐朽菌を明らかにする。さらに、トドマツに腐朽菌を接種した立木を伐採・解体し腐朽の進展を調査し、接種した腐朽菌の種類ごとに腐朽菌の進展状況を調べてそれぞれの腐朽能力を明らかにする。 最終年度には、上記に関して補足的なデータを取りながら研究結果全体を取りまとめて、トドマツ幹・根系の損傷から侵入する腐朽菌類相を明らかにする。また、損傷後の年数から進展速度を明らかにし、傷のサイズや程度との関係などを総合的に勘案して幹・根系損傷による腐朽被害のリスクを評価する。
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Causes of Carryover |
DNA塩基配列解析用試料の調製が諸般の事情により年度末までに間に合わなかったことから塩基配列解析委託を次年度に繰り越した。残額については今年度請求の助成金と併せDNA塩基配列解析委託料として使用する。
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