2018 Fiscal Year Research-status Report
カメムシ類による種子の吸汁は温暖な地域のヒノキの更新を制限しているか?
Project/Area Number |
17K07862
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
野口 麻穂子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00455263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相川 拓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90343805)
酒井 武 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80353697)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒノキ / 種子 / 充実率 / 吸汁 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒノキの稚樹は比較的高い耐陰性を持つことから、前生稚樹による天然更新が可能とされるが、林内に稚樹がみられる林分は限られ、特に温暖な地域で少ないことが報告されている。その原因として、種子の充実率自体が低いことが考えられる。本研究は、カメムシ類によるヒノキ種子の吸汁が、温暖な地域のヒノキ林における種子の充実率の低下をもたらしているかどうかを検証することを目的としている。当年度は、気候域の異なる高知県、長野県、岩手県内の国有林において、ヒノキ種子および球果のサンプリングを引き続き実施するとともに、カメムシによる吸汁被害を受けた種子を検出するための技術開発を行った。カメムシ類のうち、ヒノキ種子のもっとも主要な加害種とされるチャバネアオカメムシについて、DNA増幅のためのプライマーを設計し、同種に飼育下で吸汁させたヒノキ種子を用いた検出実験を行ったところ、ターゲット領域の増幅が確認された。さらに、これらの吸汁ヒノキ種子について通常のリター・種子トラップサンプルの処理に準じた風乾と温風乾燥器による乾燥を実施しても同様に検出が可能であること、また、野外のヒノキ球果に袋かけをして同種を放飼し吸汁させた種子を用いた場合でも検出が可能であることが確認された。一方で、ヒノキの球果上には、属・種の異なる複数のカメムシ類が生息することが報告されており、チャバネアオカメムシ以外の種による吸汁の可能性が排除できないことから、幅広い種のカメムシ類を対象とした補助的な検出方法として、吸汁時に形成される唾液鞘を染色する検出方法についても試行し、未染色では発見できない吸汁痕を染色により検出できることが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究から、もっとも主要な加害種とされるチャバネアオカメムシについて、吸汁を受けたヒノキ種子を分子生物学的に識別することが可能となった。また、ヒノキ種子サンプルの収集もおおむね順調に進んでいることから(2)の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた各試験地のヒノキの種子・球果サンプルに対し、軟X線写真および染色を用いた方法、ならびにカメムシ類のDNAを増幅する方法を適用して充実率と被害状況の分析を実施し、結果を取りまとめる。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、試験地の一部で、自然災害によりアクセスができなくなる時期が生じ、サンプリングの回数を減らさざるを得なかったことから、旅費の使用額が当初予定より少なくなった。また、実験方法を確立した後に、次年度に集中的な分析を実施することが効率的と判断した。次年度使用額は、主に、研究補助者の賃金および分析に係る消耗品購入の費用として使用する予定である。
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