2018 Fiscal Year Research-status Report
Regional mapping of soil thickness predicted by machine learning techniques
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17K07865
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
山下 尚之 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30537345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 靖浩 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353616)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 土層厚 / マッピング / 機械学習 / 空間推定 / 土壌深度 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の森林における土層厚(土壌深度)の空間分布はほとんど明らかになっていない。本研究は、機械学習を用いた空間推定モデリング(マッピング)と、その検証のための効率的な広域土層厚調査によって、日本の複雑な地形における土層厚分布を可視化・精緻化することを目的とする。昨年度までは機械学習を用いた土層厚空間推定モデルの構築と既存研究等による教師データの収集を進めた。本年度は更なる教師データの収集とモデル検証を目的として、茨城県と栃木県の国有林を中心に踏査を行い、特に土層強度検査棒による計測と林道法面に露出した土層の観測を組み合わせることで多点の広域土層厚データを得た。これらの広域土層厚データを教師・検証データとした機械学習モデルを用い、関東北部を対象とした広域土層厚マップを推定・作成した。機械学習モデルの説明変数は、国土地理院の数値標高モデル(10m)から算出された18の地形因子(傾斜、斜面方位、曲率等)と降水量・気温の平年値メッシュを用いた。本モデルによって得られたマップの精度を10倍交差検証によって評価した結果、対象範囲における表層土層厚分布を誤差0.9 mで推定できた。このマップでは各地で斜面中上部の土層が厚く推定されており、局所スケールでは既存研究の傾向を良く反映していた一方、広域スケールでは観測点周辺を除くエリアでの不確実性が大きかった。広域スケールでの土層厚変動には火山灰の分布様式が関与している可能性があり、今後、これらの情報をモデルに反映させることにより、マップの精緻化を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は土層厚の広域調査を実施するとともに、初年度に整備したデータと合わせて予備的な広域土層厚マップを作成した。広域調査では茨城県と栃木県の国有林を中心に踏査を行い、土層強度検査棒による計測と林道法面に露出した土層の測量を組み合わせることで、136点の広域土層厚データを得た。これを茨城県のつくば市と城里町の山地小流域試験地における既存研究の土層厚測定値と合わせ、800点の土層厚データを準備した。これらのデータを教師・検証データとした機械学習モデル(ランダムフォレスト・勾配ブースティング等)を用い、関東北部を対象とした広域土層厚推定を実施した。モデルの説明変数データとして国土地理院の数値標高モデル(10m)から算出された18の地形因子(傾斜、斜面方位、曲率等)と降水量・気温の平年値メッシュを用いた。本モデルによって得られたマップ精度を10倍交差検証によって評価した結果、対象範囲における表層土層厚分布を誤差0.9 mで推定できた(R2 = 0.64)。得られたマップについて詳細な検討を行った結果、局所スケールでは、各地で斜面中上部の土層が厚く推定されており、既存研究の傾向を良く反映していた。モデル内では斜面位置、斜面方位に関する地形因子の重要度が相対的に高く、これが地形に応じた局所的な土層厚の空間変動に寄与したと考えられた。一方、広域スケールでは観測点周辺を除くエリアでの不確実性が大きくなっていた。広域スケールでの土層厚の空間変動要因についてはまだ不明な部分が多いものの、火山灰の分布様式が関与している可能性が高かった。本年度は、当初目標としていた広域調査の実施とこれを用いた予備的なマップの作成を実施し、全国マップ作成のための課題を洗い出すことができた。したがって、本研究はおおむね順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に茨城県・栃木県で実施した広域土層厚推定マップの精緻化を進め、全国スケールへの拡張を目指す。特に広域スケールでのマップの精緻化のために、火山灰堆積の分布を考慮した説明変数をモデルに組み込む。また、スケールの拡張にあたっては、森林吸収源インベントリ情報整備事業(林野庁)や過去の国有林林野土壌調査報告の情報を活用する。機械学習モデルの改良と検証を繰り返し行うことによってマップ精度の改善を進め、最終的なマップを出力する。さらに、得られたマップの不確実性評価を実施する。マップ全体の誤差(RMSE)や相関係数(R2)を算出するほか、観測地点の密度分布等を反映した不確実性マップを作成する。全球や他地域における土層厚マップとの比較によって、日本における土層厚分布の特徴と空間推定における課題を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は広域調査を4~5回実施するための旅費を計上していたが、3回の広域調査を実施した段階で解析を進めた結果、その後の調査地域を変更することにした。その際、調査許可の取得や準備の時間も限られていたため、残りの調査は次年度に実施することにした。この繰り越し分および翌年分の予算は、5月末に実施することが決定している残りの広域調査と、6月にカナダで開催される国際学会での研究成果発表に主に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)