2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07866
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
長倉 淳子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353787)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 窒素付加 / 連年施肥 / 葉の養分含有量 / 窒素源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、窒素過剰によって樹体の養分バランスがくずれ水ストレスを受けやすくなるという仮説を検証すると共に、樹木の養分利用の変化プロセスを明らかにすることである。 1978年から現在まで無施肥、NP(窒素、リン)施肥およびNPK(窒素、リン、カリウム)施肥の3処理を受けている北海道のウダイカンバ林とトドマツ林において、施肥を開始した1978年から18年間秋に採取された葉試料および、2016~2018年秋に採取した葉試料について、養分含有量、炭素窒素安定同位体比を測定した。葉のリン含有量はウダイカンバ、トドマツ共に施肥区(NP区、NPK区)で高い傾向がみられた。しかしながら、K施肥を受けているNPK区でも両樹種とも葉のカリウム含有量は高まらなかった。マンガン、アルミニウムは土壌が酸性化すると溶出するとされており、葉のマンガン含有量は両樹種ともに施肥区で無施肥区より高かったが、葉のアルミニウム含有量はトドマツでは施肥区で高かったがウダイカンバは処理間差が不明瞭であった。水ストレスの指標となる葉の炭素安定同位体比が、降水量の少ない年には施肥区が無施肥区より高い場合があり、窒素施肥で水ストレスが助長される可能性が示唆された。 1997年から2003年まで毎月窒素施肥(硝酸または硝安)を受けた茨城県のスギ林において、施肥を受けた7年間の秋に採取された葉試料の炭素窒素安定同位体比の測定を行った。施肥開始当年は葉の窒素安定同位体比に処理区間差はなかったが、窒素施肥を受けて5年目の2001年から窒素安定同位体比に処理による有意差が生じ、その後も2003年まで硝安区は他の区より窒素安定同位体比が低い状態が続いた。利用している窒素源の違いを反映していると考えられる。葉の炭素安定同位体比が、対照区より窒素施肥区で高い傾向がみられ、窒素施肥で水ストレスが増大している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していた3つの調査林分のうち、北海道の2林分(樹種:ウダイカンバ、トドマツ、処理:無施肥、NPK、NP)の18年分の過去試料について、葉の塩基含有量、葉の窒素含有量、葉の炭素窒素安定同位体比の測定が完了した。茨城県のスギ林分(処理:無施肥、硝酸、硝安)の過去試料についても分析を進めている。しかし、今年度採取した葉、土壌試料の養分分析がまだ終わっていない。また、窒素含有量、炭素窒素安定同位体比の分析機器の稼働に必要なヘリウムガスが入手困難になっており、分析を見合わせているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
過去試料だけでなく、現在の葉試料、土壌試料も採取して分析し、経時変化を明らかにする予定である。分析機器の状況によって分析が滞る可能性もあるが、分析可能な項目から分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
実験補助をお願いする予定の方の都合がつかず、謝金が予定より少額に収まったこと、分析の進行が遅れて試薬を購入しなかったこと等が理由で使用差額が生じた。 次年度は、別の実験補助員を雇用し、実験を進める予定である。
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Research Products
(2 results)