2019 Fiscal Year Research-status Report
Parasitism mimicry in plants and insects
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17K07869
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉浦 真治 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70399377)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 擬態 / 寄生 / 植食性昆虫 / 視覚的防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)リーフマイナー(潜葉虫)には鳥の糞に似た潜葉痕を形成する種がある。こうした潜葉痕は、鳥の糞に擬態して植食者による葉への食害を減少させる可能性がある。この仮説を検証するために、クズの中央の小葉に白い修正液によるペイントを施すとコントロール(うすめ液で処理)よりも食害が少なくなるかどうか、大阪府で野外実験を行った。5-6月に大阪市鶴見緑地、6月に大阪市舞洲、10月に堺市大泉緑地で実験したところ、舞洲と大泉緑地で白いペイントありの葉はコントロールに比べて1/2以下の食害率になり仮説が支持された。おもな植食者は昼行性のクズノチビタマムシとツチイナゴであり、ペイントが視覚的にこれらの昆虫による食害を妨げた可能性がある。 (2)チョウ目幼虫には体表に白点をもつ種があり、ヤドリバエ卵などに擬態して捕食寄生を回避している可能性がある。モクメキリガ属の幼虫は、白点をもたない種から白点を多数散布する種まで変異がある。昨年度に続き本年度も、大阪府でこれらの幼虫を採集し寄生率を調査した。白点をもたないキバラモクメキリガと少数の白点をもつヒロバモクメキリガ、ハネナガモクメキリガはヤドリバエかヒメバチによる寄生を10%程度受けていたが、白点を多数もつアヤモクメキリガでは寄生が認められなかった。しかし、アヤモクメキリガのサンプルサイズが少なく、まだ仮説が支持されるかどうかは不明である。 (3)チョウ目幼虫に似たゴール(虫えい)は、視覚的に植食者によるゴールへの食害を回避している可能性がある。検証には粘土で作成した幼虫モデルによる野外実験が有効であろう。神戸大学構内で秋季に、粘土モデルの適切なサイズを検討したところ、5mm幅30mm長のモデルが10mm幅50mm長のものより野鳥による攻撃率が高かった。小型のモデルが今後の実験に有効であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、植物、昆虫、その他の無脊椎動物における、さまざまな寄生擬態と考えうる例を野外観察により見出している。その中から、鳥の糞に視覚的に似たリーフマイン(潜葉痕)とチョウ目幼虫に似たゴール(虫えい)について、野外実験を試みている。本年度はリーフマイナーで仮説を支持する結果が得られた。また、幼虫擬態ゴールの検証のために、粘土モデルの実験方法を精査することができた。実験による検証を強化する必要はあるが、比較的順調に進行しているだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)植物と昆虫における寄生擬態の可能性がある例を、引き続き野外観察により探索する。植物の寄生擬態例は多く提案されているが、昆虫の寄生擬態はいまだほとんどないので、この点を考慮する。 (2)植物の寄生擬態について、種内変異や種間比較を用いて、野外での食害量から検討する。例えば、茎にアブラムシやアリに似た斑をもつオオオナモミとほとんど斑をもたないオナノミでの被食量の比較などが考えられる。 (3)本年度行った鳥の糞に似た潜葉痕が食害を減少させるかを検証する実験を繰り返し、反復を増やす。 (4)チョウ目幼虫に似たゴールが植食者による食害を減少させたり、野鳥を誘引して周囲の植食性昆虫を減少させる効果があるかを、野外で粘土モデルにより検証する。 (5)チョウ目幼虫の体表の模様や点が、寄生や捕食寄生に擬態している可能性があるかを、飼育調査により明らかにする。モクメキリガ属のデータを増やす必要がある。
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Causes of Carryover |
本年度は分光器を購入したところ想定以上に割安であったために次年度使用額が生じた。次年度は野外調査や野外実験、学会・論文発表が必要なので、そのための旅費、調査用具、出版費用に使用したい。
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Research Products
(1 results)