2021 Fiscal Year Research-status Report
Parasitism mimicry in plants and insects
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17K07869
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉浦 真治 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70399377)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 擬態 / 寄生 / 植食性昆虫 / 視覚的防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)ダミー幼虫を用いた樹種と季節による鳥捕食圧の変化の野外調査、(2)植物の視覚的対植食者防御の総説の執筆を行った。 (1)近年、粘土でチョウ目幼虫のモデルを作成して野外の樹木に設置して、鳥などの捕食圧を評価する実験が行われている。本課題でも、ダミー幼虫を設置することは植物にすでに幼虫がいるように見せる操作実験になるため、予備的に最適な実験条件を検討する必要がある。本年度は、神戸大学構内において、ソメイヨシノとクスノキで1年間毎月1回、ダミー幼虫を設置して残された傷をもとに捕食圧を評価した。また、実際の幼虫と鳥の数もカウントした。その結果、幼虫は4-5月に多く、鳥は冬季に多かった。ダミー幼虫への捕食圧は4-5月と8月に高くなり、樹種による影響はなかった。このことから、樹種にはあまりこだわる必要はなく、春と夏が実験に適した季節であることが分かった。 (2)植物の植食者に対する防御は、二次物質や揮発成分などの化学的防御中心に研究されてきた。しかし、視覚的な防御も重要である。今回、種生物学会のシンポジウムを機会として、一般向けの総説を執筆した。(a)カムフラージュ(背景との一致、マスカレード)、(b)緑や茶色以外の色彩により植食者のカムフラージュを妨害する、(c)赤い色や斑入りによる警告色、(d)紅葉の適応的意義、(e)他の有毒、有刺植物への擬態、(f)アリ、アブラムシ、幼虫などの節足動物への擬態、(g)植食性昆虫による植物を用いた視覚的防御、(h)今後の展望について解説し投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物、昆虫、その他の小動物において、さまざまな寄生擬態候補を野外観察により見出し、そのうちのいくつかは論文として公表してきた。また、その中から、鳥の糞に似た潜葉痕と鱗翅目幼虫に似たゴール(虫えい)について、野外実験を行い、前者では擬態の効果を支持する結果を得ている。幼虫擬態ゴールの仮説検証にはダミー幼虫(粘土で作った幼虫)を用いた野外実験が有効と考えられるが、そのための予備実験も本年度や前年度に行って十分な結果が出ている。また、植物の視覚的な防御は国内でまとまった情報が発信されてこなかったが、学会シンポジウムでの発表と総説の執筆により、生態学、植物学の研究者や一般市民に広く知らせることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)植物、昆虫、他の無脊椎動物などで寄生擬態と考えられる例がないか、野外観察を継続する。昆虫や動物の寄生擬態はほとんど知られていないので、これが事実なのか見逃されているだけか検討したい。 (2)植物の寄生擬態について、種内変異や種間比較を用いて、その効果を野外での食害量から評価する。また、植物にペイントを施して、アブラムシやアリの群れがいるように見せると食害が減少するかを野外実験する。 (3)鱗翅目幼虫に似たゴールが植食者による食害を減少させたり、野鳥を誘引して周囲の植食性昆虫を減少させる効果があるかを、野外でダミー幼虫により検証する。 (4)(1)-(3)の成果を論文や学会発表を通じて発信する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症関連の業務により、研究の進展が遅れ物品購入が滞った。
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