2017 Fiscal Year Research-status Report
The effect of micro plastic on symbiosis between corals and Symbiodinium
Project/Area Number |
17K07890
|
Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
大久保 奈弥 東京経済大学, 経済学部, 講師 (50401576)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | イソギンチャク / サンゴ / マイクロプラスチック / 内胚葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、中国から排出されるPM2.5など、大気中に含まれるナノ・ミクロスケールの粒子(以下、粒子)が我々人間に与える影響について懸念されている。しかし、人間が粒子を直接吸い込んだ場合のみに注目し、粒子を摂取した動物プランクトンが魚介類に食べられ、その魚介類を人間が摂取するといったような、食物連鎖から受ける間接的影響についてはあまり調べられていない。河川海洋に生息する生物が粒子を摂取した際、異物として放出するのか、もしくは、取り込まれた場合、粒子がどの栄養段階にまで移動するのか、各栄養段階の生物を用いて、影響の有無やレベルを実験的に調べる必要がある。また、私の専門であるサンゴがマイクロプラスチックによってどのような影響を受けるのかも不明である。 そこで、動物プランクトン(アルテミアなど)、それを食べる刺胞動物(セイタカイソギンチャク・サンゴ)、を用いて、ッマイクロプラスチックの代わりに蛍光ラテックスビーズの取り込み実験を行い、粒子が生体に与える影響について調べることを目的とし、実験を行なった。生息場所でナノ・ミクロスケールの粒子を人為的に生物へ取り込ませると、その環境へ被害を与える可能性があるので、全ての実験は室内の閉鎖環境で行った。まずは、粒子の動向のみを純粋に探る必要があるため、生体に無害とされ、消化されることのないこの素材を用いた。また、市販の洗顔料に含まれているマイクロプラスチックも単離して、取り込ませた。蛍光顕微鏡下で、ビーズサイズによる取り込みのスピード、体内での粒子の動向を生きたまま観察し、ビーズ摂取の有無による生残率も測定した。その結果、動物プランクトンから食物網によって上位の生物へとマイクロプラスチックが移動することがわかった。また、イソギンチャクにおいては、体中の内胚葉に全て取り込まれてしまうことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イソギンチャクと褐虫藻の共生関係を調べるために行った実験から、2つのことが明らかになった。まず1つ目は、蛍光マイクロビーズをイソギンチャクに摂取させると、隔膜(腸にあたる部位)に取り込み、触手を始め体内全体にプラスチックを行き渡らせ、数日後には、プラスチックを吐き出すということだ(大久保 未発)。このことは、海洋に漂うプラスチックが、例えば生物に取り込まれた後、生物濃縮されて海底に沈み、または、生物堆積により埋もれることがなく、永遠と海に漂い続けるということを意味する。海洋に漂うプラスチックは毒物を吸着することが知られているが(Endo et al. 2005)、体内に取り込んだプラスチックから毒物だけが生体内へ残留し、プラスチックだけが放出され、そして、再度プラスチックが毒物を吸着し、再度生物に取り込まれるという、プラスチック循環の負のサイクルが出来上がっているということが示唆された。そして2つ目に、実験に用いたセイタカイソギンチャクが、褐虫藻という植物プランクトンを体内に共生させる生き物であることから偶然分かったことだが、共生藻の量が多いイソギンチャクにはプラスチックが取り込まれにくく、少ないものには取り込まれやすい可能性が示唆された。逆に言うと、体内にプラスチックが数多く入ってしまうと、共生藻が新たに体内へ入りづらく、共生関係に問題を引き起こす可能性があるということだ。これはおそらく、褐虫藻が入るべきスペースにマイクロプラスチックが入り込むことに起因するのだろうと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
褐虫藻と共生する海洋生物は数多く、私が長年に渡って専門とするサンゴもそのひとつである。ヒトが生息しないオーストラリアの奥地では、温暖化や酸性化といったストレスがかかってもサンゴが健康に生息しやすいことから、人間による様々な海洋汚染がサンゴの弱体化を招いている可能性は高い。もし、上記のイソギンチャクの結果がサンゴにも当てはまれば、サンゴと褐虫藻の共生関係を妨げる原因の1つを明らかにすることが出来る。過去の知見では、生物が餌以外の物質を取り込んで体内に長期的に保持することはないと考えられていたが、実際に餌に混ぜて食べさせたところ、イソギンチャクは1umのビーズを胃の中に取り込むだけでなく、体中の組織の内部にまで入れることが初めて分かった(投稿中)。プラスチックがサンゴと褐虫藻の共生関係を阻害するという上記の実験を行うためには、完全に褐虫藻が入っていない状態のサンゴを手に入れ、最初にプラスチックを体内に取り込ませてから、その後、褐虫藻を感染させる必要がある。しかし、成体のサンゴには既に褐虫藻が入ってしまっている。例えば、自然界で白化が起きる際と同じく、水温を上げてサンゴにストレスをかけ、サンゴから無理やり褐虫藻を取り除いて白化させては、プラスチックの影響が純粋に調べられない。また、発生後期から着底までは褐虫藻が初めて感染する時期なので、感染の有無がサンゴの生存を左右していることもあり、サンゴの発生段階で唯一褐虫藻が入っていない、着底直後の稚サンゴを用いて実験を始める。
|
Causes of Carryover |
思ったよりも金額が安かった
|