2018 Fiscal Year Research-status Report
閉鎖性山岳湖沼の放射性セシウム濃度の下げ止まり現象の原因究明
Project/Area Number |
17K07894
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Research Institution | Gunma Prefectural Fisheries Experiment Station |
Principal Investigator |
新井 肇 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (60450384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久下 敏宏 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (20450380)
角田 欣一 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30175468)
森 勝伸 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (70400786)
鈴木 究真 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (80450386)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 下げ止まり / 湖底質 / 湖水 / ワカサギ / プランクトン / 分配係数 / 逐次抽出法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、赤城大沼における水生生物に含まれる放射性セシウム(Cs)濃度の下げ止まりについて、周辺土壌、湖底質及び水生生物からの放射性Csの溶出のしやすさを逐次抽出法を用いた化学形態別分析によって評価し、食物連鎖に伴う生態濃縮の機構解明に努めている。また、湖底質から湖水への放射性Cs溶出の可否を確認するために、様々な実験条件において湖底質と湖水間の放射性Csについて分配係数の測定を行い、それら実験条件の係数に与える影響を検討した。加えて、水温躍層の形成される8月に深度別に細かく採水を行い、実際の放射性Csの鉛直濃度変化を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周辺土壌、湖底質及び水生生物からの放射性Csの溶出のしやすさを評価した結果、湖底質に含まれる可溶態の放射性Cs濃度がワカサギ体内の放射性Cs濃度に相当することが分った。現在、イメージングプレートによって生体内の放射性Csの分布を調査している。また、ワカサギの胃内容物として確認されている動物プランクトンと植物プランクトンの放射性物質の分布を調査した結果、動物プランクトンに比べ、放射性Cs濃度の高い植物プランクトンでは放射能の高い粒子が多く確認された。 湖底質と湖水間の放射性Csについて、種々のパラメーターの影響を考慮して分配実験を行った結果、分配係数として~1×105 が得られた。実際の湖水の水深別における放射性Cs濃度変化を調べた結果、表層水で変化なく、水温躍層より深い水深で濃度の上昇を確認した。これらのことから、放射性Csは成層期に湖底質から溶出し、循環期に湖全体に供給されている可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
生体内に含まれる放射性Csの可溶態は食物連鎖が上がるにしたがって高くなることを明らかにしたが、可溶態の放射性Csが魚体全体に広がっているのか、局所に偏在しているのかが明らかとなっておらず、イメージングプレートを用いた極微量放射線分布測定によって魚体内の吸着状態を解明する。加えて、植物プランクトンに存在する放射能の高い粒子の存在形態を特定し、水生生物にどのような影響を与えているのかを評価する必要がある。 湖底質と湖水間の放射性Csの分配係数の値そのものはほぼ確定できたと考えられる。今後は、分配係数と実際の湖底質直上水や間隙水中の放射性Cs濃度との関連や赤城大沼における周年を通した放射性Csの物質収支を検討していく必要がある。
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Causes of Carryover |
(理由)試料採取や分析は概ね順調に終了した。しかし、現地調査が天候不良により一部実施できず、調査回数が減少したこと、一部の分析が残っているため、分析に使用する試薬などの追加購入が少なかったことがあげられる。 (使用計画)次年度に繰り越された研究費は、未実施の調査などの出張費用、分析に使用する試薬や機器利用費に充てると共に、これまでの成果を学会だけでなく国際学術誌に発表するための英文校閲費に充てる。そして、前年度の試料を優先的に分析し、最終年度の研究を予定どおり推進して成果に結びつける。
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