2019 Fiscal Year Annual Research Report
Current status of a wild population of chum salmon on the Sanriku Coast, based on DNA genotype-based kinship estimation
Project/Area Number |
17K07904
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
峰岸 有紀 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (80793588)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サケ / 小鎚川 / 自然産卵 / 遡上数 / 産卵床 / 繁殖生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去2年に引き続き,DNA分析のための組織採集に加え,岩手県小鎚川に遡上するサケ親魚の基礎情報を収集することを目的として,2019年9月19日から2020年3月4日まで,これまでと同様の調査区間(河口から約1kmの地点から上流の約3kmの区間)において踏査を実施した。踏査では,サケ親魚の計数,産卵床の数と場所の記録と,産卵後のサケ死骸の尾叉長の計測およびDNA分析用の組織と年齢査定用の鱗の採取を行った。その結果,親魚は2019年9月25日から2020年3月4日までの間に計234個体を,産卵床は2019年9月25日から2020年2月20日までの間に,調査区間全体で少なくとも186床をそれぞれ記録し,計898個体のサケ死骸から鱗と組織を採取した。過去2年と比較すると,今シーズンの回帰親魚,産卵床および産卵後の死骸の数は大きく減少した。岩手県においては,2019年のサケ親魚の来遊は,孵化放流事業が本格化する前と同程度の低水準であったことから,小鎚川におけるサケ回帰親魚の減少は,日本に来遊するサケ個体群全体の資源量変動に伴うものと考えられた。 本研究の結果,2011年の震災以降,孵化放流を実施していない小鎚川におけるサケの自然産卵の実態の一端が明らかになった。すなわち,小鎚川では,孵化放流河川の大槌川と比較して,決して小さくない個体群サイズを自然産卵のみで維持していることが明らかになった。また,本研究により初めて,小鎚川でのサケの回帰数,産卵の時期,産卵床の分布および数について,定量的な情報を得ることができた。これらの成果は投稿論文として取りまとめた他,シンポジウムや国際ワークショップなどでも報告した。一方で,2019年に採集した個体も加えた個体群全体のDNA分析については,更なる解析が必要であることから,今後も解析を継続した上で取りまとめ,成果を公表する予定である。
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