2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07921
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
渡邊 俊 近畿大学, 農学部, 講師 (60401296)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ニホンウナギ / 黄ウナギ / 住み処 / 固執性 / 水温 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
宮崎県耳川にて鰻筒により2015年6月と8月に採集した黄ウナギ12個体(ウナギA~L)中、8個体(ウナギA~G)の体内に発信機コード化ピンガー(V9-2L)を、また残りの5個体(ウナギH~L)の体内に加速度ピンガー(V9A-2L)を埋め込み、宮崎県東臼杵郡美郷町渡川に設置した半自然的な実験池へ2015年7月7日に4個体(ウナギA~D)、9月24日に8個体(ウナギE~L)を放流した。池の中心とその4隅には受信機(VR2W)を5台備え、それらの間に4つの塩ビパイプを設置した。池の水温と発信機からの音波の受信データを用いて、2016年6月まで本種の行動を記録した。 上記の実験で得られたデータを用いて住み処の利用に関する位置情報を解析すると、ウナギC、D、Hの3個体はそれぞれの追跡期間の50%以上をパイプで過ごし、特定のパイプの利用率は65%を超えることが明らかとなった。また、ウナギBに関しては池中心部のはまり石の下を巣にしたことが目視とデータ解析から明らかになった。これらの個体は特定の住み処に対する固執性を示したと考えられた。加速度発信機を装着した5個体は、水温15~26℃で計測上限の加速度値を記録し、この水温帯が最大の活動度を示す適水温と考えられた。活動の季節性については、行動圏の広さと加速度値の両指標が夏に上がり、冬に下がる傾向が認められた。月ごとの平均受信回数と平均行動面積において、負の相関が確認できた。すなわち、受診回数が少ない場合、1回で動く面積は広く、また受診回数が多い場合、1回で動く面積は狭くなる傾向が示された。この結果は、各個体が自分の行動範囲を重視し、さらには他の個体の行動も意識しているのではないかと推察した。 出前授業を小学校9件と高校3件、また市民講座を2件行い、ニホンウナギの不思議な生態を紹介し、本種を含む水圏の保全と修復の重要性を伝えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に掲げた研究実施計画について、ある程度の結果(研究実績の欄参照)を出すことができ、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に掲げている研究実施計画(静岡県伊東市宇佐美3河川における黄ウナギの生態およびアウトリーチ活動)についての結果を得たい。また、昨年度のバイオテレメトリー法による半自然池での黄ウナギの行動実験の結果から、各個体が自分の行動範囲を重視し、さらには他の個体の行動も意識しているのではないかとの仮説を調べるため、それぞれの個体の動きに着目した解析を行いたい。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 魚類学2017
Author(s)
矢部衞、桑村哲生、都木靖彰
Total Pages
377
Publisher
恒星社厚生閣
ISBN
978-4-7699-1610-9