2017 Fiscal Year Research-status Report
新規ナノ材料を利用した細菌性魚病に有効で実用的な水産用浸漬ナノワクチンの開発
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17K07922
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
三留 規誉 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90431981)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノワクチン / 魚病 / 外膜タンパク質 / 抗原 |
Outline of Annual Research Achievements |
水産用ワクチンは注射法により個体ごとに接種するものがほとんどであり、一度に数万匹を処理しなければならない養殖場において普及の妨げとなっている。本課題では、キトサンを原料とした新規ナノ材料である中空針状のナノチューブを、浸漬ワクチンのベクターとして利用し、簡易なワクチンデリバリー法を開発するための研究を行う。具体的には、(1)魚のワクチンとなる抗原性タンパク質の調製法の開発、(2)ワクチンベクターのナノチューブの調製法とワクチンの導入法の開発、(3)作製したナノワクチンの評価を行う。これらにより、新規ナノ材料を利用した細菌性魚病に有効で実用的な水産用浸漬ナノワクチンを開発する。 H29年度は、①ワクチンのベクターとなるナノチューブを作製、②ナノワクチンの作製に必要な抗原性タンパク質の精製法の確立と抗原性の確認を行った。 ナノチューブの作製法は、共同研究者のナンヤンポリテクニックのJeffry研究室のもとで修得し、Halloysite G(Sigma-Aldrich)をエビの甲羅由来のキトサンで修飾して作製した。 ビブリオ病を引き起こす海洋性Viblio spp.、エドワジェラ症を引き起こすEdwardsiella tardaを培養し、遠心分離によって微生物の菌体を得た。コイ(体長10cm約15g)の体内にホルマリンで不活性化した微生物を接種させ、3週間水槽で飼育した。飼育したコイから血液を採取し、微生物に対する抗体を含む血清を得た。 微生物を超音波処理により、細胞膜を破砕する。遠心分離法と超遠心分離法により、破砕した細胞液から、膜画分(外膜画分と内膜画分)と細胞質画分を分離する。膜画分から界面活性剤の可溶性の違いを利用して外膜タンパク質を抽出した。コイ体内で作製した微生物に対する抗体が、抽出した外膜タンパク質に結合することを抗原抗体反応により確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究者のナンヤンポリテクニックに1名学生を派遣して、ナノチューブの調整法、魚からの採血法など、研究を推進する際に必要な技術を修得し、研究を効率的に進めることが可能となった。研究計画通り、複数の微生物に対する抗体をコイの体内で作製することができた。複数の微生物から外膜たんぱく質を精製することができた。そして、この外膜タンパク質が抗原性をもつことを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方策として、③精製した微生物の外膜たんぱく質をナノチューブに導入する方法を確立する。④ナノワクチンの魚への接種と抗体作製の確認を行う。 ③の外膜タンパク質の導入方法については、用いるタンパク質の濃度と量、ナノチューブの濃度と量を検討する必要がある。④のナノワクチンの魚への接種は、使用するナノワクチンの濃度、接種する時間、回数を検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
この年度は、国際学会発表に伴う旅費を計上していたが、校務の都合で国際学会発表はしなかった。また、論文投稿に伴う英文校正と論文投稿料を計上していたが、今年度は論文投稿しなかった。次年度以降の国際学会発表、論文投稿で予算を使用する計画である。
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