2017 Fiscal Year Research-status Report
噛み合い防除のため切歯形成遺伝子を多重低機能化したトラフグ切歯の形態解析
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17K07923
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
岡本 裕之 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, グループ長 (50372040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 篤志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主幹研究員 (30443352)
木下 政人 京都大学, 農学研究科, 助教 (60263125)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 切歯形成遺伝子 / トラフグ / 遺伝子編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
トラフグSCPP遺伝子群の9遺伝子中12座(SCPP1, -2, -3A-1, -3A-2, -3B-1, -3B-2, -3C-1, -3C-2, -4, -5, SPARC, SPARCL1)に対して設計したcrRNA各31ng/μl,および tracrRNA 41ng/μl, Cas9RNA 188ng/μl に調整したRNA溶液を、トラフグ受精卵1602個に顕微注入した。ふ化時期の生存率は81%(n=31)であった。推定ふ化数は1200尾であった。同様の試験を計3回実施し、ふ化仔魚は体長7-10cm程度まで育成し、HMA法により変異導入を確認した。その内45個体について、9遺伝子座に対して同時変異遺伝子数が4個のものは4個体(8.9%)、3個のものは11個体(24.4%)、2個のものは10個体(22.2%)、1個のものは16個体(35.6%)、0個のものは4個体(8.9%)であった。また各遺伝子ごとの変異導入個体数は、SCPP1が36個体(80.0%)、SCPP2が0個体(0%)、SCPP3Aが4個体(8.9%)、SCPP3Bが13個体(28.9%)、SCPP3Cが7個体(15.6%)、SCPP4が9個体(20.0%)、SCPP5が0個体(0%)、SPARCが19個体(42.2%)、SPARCL1が1個体(2.2%)であった。受精卵を用いた切断活性の試験結果では、SCPP3B-1, SCPP3C-1, SCPP4, SPARCのcrRNAの活性が高く残りは低い傾向だったが、SCPP1については合致しなかった。種苗として育成できたすべての個体において、目視において歯の形状への変化は認められなかった。この結果から、部分的に一部のSCPPタンパクの発現量や発現細胞が減っても、歯の形状自体には影響を与えないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画目標としていた、受精卵への顕微注入によって切歯形成に関わる複数のSCPP遺伝子の同時変異導入を確認できた(9遺伝子について最大で4遺伝子)。その一方で、複数の遺伝子に変異が入った個体においても、その切歯に欠損や形態異常などの形態的変化(表現型の違い)は認められなかった。その理由の一つとして、変異導入世代(F0世代)では、同一個体内で変異が入っている細胞と変異が入っていない細胞が混在している状態(体細胞モザイク状態)であることがあげられる。今後、切歯のモルフォメトリー(形態)解析を実施するためには、より変異が入った個体を作出する必要があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子編集技術を用いた遺伝子の機能解析の最大の問題点として、遺伝子編集第一世代では、変異が体細胞モザイク状態に導入されているため、(遺伝子の機能に直接依存するが)変異の影響が限定的あるいは顕在化しないことがあげられる。この問題の解決策として、変異遺伝子を全体細胞でホモ化する事が必要である。そのためには交配による第二あるいは第三世代の作出が通常の手段となるが、成熟に数年かかる魚種については世代交代の時間がかかることから現実的でない場合がある。その場合、第一世代で機能解析するための方法の一つとして、ほぼすべての体細胞に変異が入る様な非常に高効率の変異導入条件を検討する必要がある。また現在標的としてるSCPP遺伝子以外の候補遺伝子として、ほ乳類で歯形成に関係することが知られている遺伝子について検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
切歯形成に関する遺伝子に変異導入を確認できたトラフグ稚魚の作出はできたが、表現型に変化がでた個体の作出まではできなかったため、次世代シークエンサー等を用いた詳細な変異塩基の解析は行わず、その費用は次年度にまわすこととした。
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