2020 Fiscal Year Research-status Report
噛み合い防除のため切歯形成遺伝子を多重低機能化したトラフグ切歯の形態解析
Project/Area Number |
17K07923
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
岡本 裕之 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(南勢), グループ長 (50372040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 篤志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(南勢), 主幹研究員 (30443352)
木下 政人 京都大学, 農学研究科, 助教 (60263125)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | SCPP編集トラフグ / F1作出 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新たにSCPP編集F0魚兄妹間(F200312_001:132尾)、あるいはSCPP編集F0魚とMsx、Dlx編集F0魚間(F200312_002:11尾、F200314_005:21尾、F200314_006:68尾)、Msx,Dax編集F0魚兄妹間(F200314_007:68尾)の交配を、生精液及び凍結精液を用いて実施した(カッコ内の数字は交配ID、尾数は約一年後の生残数)。交配に用いた卵量は一交配区当たり1-5万粒であったが、上記外の4区については全滅し、一年後まで育成できたのはわずかであった(上記参照)。これまでの知見から、体長5㎝程度の段階で、歯の形成に異常がないことを確認した後、噛み合いによる斃死を防ぐため、合計2回の歯切りを実施した。これらについては、F2の作出のため育成を継続中である。一方、オフターゲットのリスクを低減すると考えられている戻し交配(バッククロス)についても別途計画していたが、今年度は新型コロナ禍の影響のため、例年尾鷲栽培漁業センターから提供を受けている天然魚由来の未受精卵及び精液が入手できなかったこと、さらに手持ちの野生型継代親魚の産卵期ともずれてしまったことから実施できなかった。そのため今年度実施できなかった編集ヘテロF1の戻し交配を再度試みるため、研究期間の再延長を申請する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度作出した切歯形成SCPP遺伝子および歯形成誘導遺伝子Msx1、Msx2、Dax1、Dlx1A、Dlx2A、Dlx3A、さらにレポーターとしてslc45a2およびチロシナーゼ遺伝子)の共編集試験うち、第4試験区 slc45a2 E1-2、Trtyr-sg2、Msx1-E1-g1、Msx2L-E1-g1、から出現したアルビノ体色モザイク変異体(野生色に白色ブチ)1尾については、野生型との戻し交配を行う予定で飼育を続けていたが、2020年6月9日に白点虫と思われる感染症のためわずか数日で全滅した。なお本死亡魚は、白色部分は体表面積の半分以下で、歯の形成も特に野生型魚と比べて変わりはなかった。一方、16年度作出のSCPP編集F0世代から通常交配により作出した、19年度産の完全ヘテロ変異を有すると考えられるF1世代23尾については、かみ合い等により減耗したが、生残している数尾については、R4年にF2ホモ変異集団の作出に利用することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作出した、歯の形成に関わるカルシウム結合タンパクSCPP遺伝子および初期の歯の誘導形成に関わる3種の細胞分化誘導遺伝子についてF0編集個体及びその凍結精液を用いて、戻し交配第一世代の作出を行い、オフターゲットや生存に不利な有害遺伝子の除去により、F1の生残性の改善を図り、編集変異のホモ化が期待できるF2の作出を推進する。F2世代が作出されれば、硬骨魚類の歯の形成メカニズムの理解と解明の一助になるとともに、歯の低形成の産業利用に向け、応用研究につながることが期待される。
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Causes of Carryover |
引き続き、歯の形態に異常をきたした編集個体が得られるまで、次世代シークエンサーによる大規模な変異解析は非効率的なため延期する。本年度新型コロナによって実施できなかった、野生型魚との戻し交配によるヘテロF1集団の作出については、研究期間の再延長の申請により実施を計画し、昨年度作出した編集魚間のF1とともに、編集変異された遺伝子の同定を予定している。
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