2018 Fiscal Year Research-status Report
紅藻スサビノリ高水温耐性品種の生物学的特性発現の分子機構解明
Project/Area Number |
17K07935
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
柿沼 誠 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (60303757)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 紅藻 / スサビノリ / 環境応答 / トランスクリプトーム / 高水温耐性 / 高水温障害 / 選抜育種 / 養殖品種 |
Outline of Annual Research Achievements |
養殖ノリの生産量や品質は,育苗期(ノリ網の殻胞子を幼葉に育成する段階)に作製される種網の優劣に大きく左右される.近年の海水温上昇が育苗期に悪影響を及ぼすため,育苗期の高水温に耐えうる品種(高水温耐性品種)が選抜育種され,我々はその高水温耐性に関わる生理学的特性を明らかにしてきた.また,高水温耐性品種の生物学的特性発現の分子機構を明らかにするために,基準品種と高水温耐性品種のトランスクリプトーム(RNA-Seq)解析を行い,約8,600のコンティグ配列(平均370 bp/コンティグ,範囲200-3,236 bp)を得た.本年度は,RNA-Seq解析データを利用して,基準品種および高水温耐性品種における転写産物の比較解析と,高水温耐性形質に関与する候補遺伝子の探索を行った. 取得した塩基配列情報のCuffdiff解析,edgeR解析等により,高水温育苗-高水温耐性品種,低水温育苗-高水温耐性品種,高水温育苗-基準品種,低水温育苗-基準品種の4検体における発現変動遺伝子(約50コンティグ)を抽出した.次に,著しい発現変動を示すコンティグについて,リアルタイムPCR解析により各候補遺伝子群の発現特性を詳細に調べた.その結果,高水温育苗-高水温耐性品種において特異的に発現量が増加する候補遺伝子(3コンティグ),高水温育苗-高水温耐性品種および高水温育苗-基準品種で発現増加する候補遺伝子(3コンティグ)が特定され,これら候補遺伝子群が高水温耐性形質に関与していると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,次世代シーケンサーを利用した網羅的トランスクリプトーム解析,遺伝子導入・発現系を利用した高水温耐性遺伝子の機能解析等を行い,スサビノリ高水温耐性品種の生物学的特性発現と高水温耐性の分子機構を明らかにすると共に,高水温耐性品種の選抜・特性評価に有効なマーカー遺伝子を特定することを目的としている. 本研究は,(1)基準品種および高水温耐性品種のトランスクリプトーム(RNA-Seq)解析,(2)高水温耐性および高水温障害発症に関与する候補遺伝子群の特定,(3)候補遺伝子群の機能解析,の3つの実施計画からなり,本年度までに当初計画通りに(1)および(2)を実施した.ほぼ計画通りに研究が進み,高水温耐性に関与する候補遺伝子群を抽出することができた.次年度は,これら候補遺伝子群の同定を進めると共に,当初計画通りに(3)を実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実施計画(2)高水温耐性および高水温障害発症に関与する候補遺伝子群の特定のうち,未着手となっている高水温障害発症に関与する候補遺伝子群の抽出と,高水温耐性および高水温障害発症に関与する候補遺伝子群の同定を行う.約50コンティグの発現変動遺伝子から高水温障害発症に関与する候補遺伝子群を抽出し,リアルタイムPCR解析により各候補遺伝子群の発現特性を詳細に調べる.また,候補遺伝子群の同定に必要な塩基配列情報を得るために,RACE PCR等を利用したcDNAクローニングを実施する. 次年度の実施計画(3)候補遺伝子群の機能解析については,クローン化した候補遺伝子cDNAを利用して当初の計画通りに進める.候補遺伝子cDNAをスサビノリ構成的発現遺伝子プロモーターに連結して候補遺伝子発現ベクターを構築する.候補遺伝子発現ベクターをスサビノリ単胞子または殻胞子に導入して高水温条件下で育苗し,生長特性や遺伝子発現特性を調べて候補遺伝子の機能特性を明らかにする.
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Causes of Carryover |
(理由)本年度の実施計画(2)高水温耐性および高水温障害発症に関与する候補遺伝子群の特定のうち,高水温障害発症に関与する候補遺伝子群の抽出,高水温耐性および高水温障害発症に関与する候補遺伝子群の同定(cDNAクローニング)が遅れたために,リアルタイムPCR解析やcDNAクローニング関連において次年度使用額(残額)が生じた. (使用計画)本年度の実施計画(2)高水温耐性および高水温障害発症に関与する候補遺伝子群の特定のうち,未着手となっている候補遺伝子群のリアルタイムPCR解析とcDNAクローニングに次年度使用額(残額)を充てる. 次年度の実施計画(3)候補遺伝子群の機能解析については当初の計画通りに進め,次年度直接経費の約80%を候補遺伝子群の機能解析とそれに必要な学内共同研究機器の利用費に使用する.また,次年度直接経費の約20%を学会発表等の旅費に使用する.
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Research Products
(2 results)