2018 Fiscal Year Research-status Report
Adaptive immunity of fish mucosal tissues against protozoan parasites
Project/Area Number |
17K07939
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杣本 智軌 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40403993)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 寄生原虫 / T細胞 / 細胞傷害活性 / 傷害機構 / ギンブナ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、ギンブナCD8+T細胞の白点虫I. multifiliisに対する傷害機構について解析した。CD8+細胞のI. multifiliisに対する傷害活性は、セリンプロテアーゼ阻害剤である3,4-Dichloroisocoumarin(DCI)を添加することで有意に低下したことから、グランザイムなどのセリンプロテアーゼを利用していることが示唆された。しかし、パーフォリン阻害剤であるconcanycin A(CMA)を添加しても、有意な傷害活性の低下がみられなかったことから、CD8+T細胞はパーフォリン以外の因子を用いて、I. multifiliisの細胞膜に穴を開けていることが示唆された。また、0.4μm径の穴の開いたトランズウェルインサートでCD8+T細胞がI. multifiliisと接触できないようにすると傷害しなくなったことから、CD8+T細胞は分泌型の傷害因子を用いるのではなく、寄生虫を殺傷するためには接触する必要があることが分かった。さらに、蛍光標識したCD8+T細胞を用いて、CD8+T細胞がI. multifiliisと接触すると、I.multifiliisの動きが止まることを蛍光顕微鏡によって観察した。これらの傷害活性機構は、鰓および腎臓由来のCD8+T細胞で顕著な違いはみられず、両臓器のCD8+T細胞は同じ特徴を有することが示唆された。これらのことから、CD8+T細胞はT細胞受容体(TCR)を介さず、未知の受容体を用いてI. multifiliisを認識している可能性が考えられた。また、哺乳類のγδT細胞が自然免疫の一端を担っていることから、寄生虫を非特異的に傷害する魚類のT細胞は、γδT細胞である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、CD8陽性T細胞が寄生原虫に対して強い傷害能を有することを明らかにしため、本年度はCD8陽性T細胞の傷害メカニズムを調査した。その結果、CD8陽性T細胞はI. multifiliisと接触することで傷害すること、セリンプロテアーゼを利用していることを突き止めた。従って、当初の目的であるCD8陽性T細胞の寄生虫に対する傷害機構の解明をおおむね達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、寄生虫を直接傷害する魚類のT細胞のより詳細な特徴を明らかにする。まず、寄生虫を傷害するCD8陽性T細胞がαβT細胞なのかγδT細胞なのかを確かめるため、ギンブナTCRγ鎖の遺伝子配列を決定する。mRNAの発現解析および得られた配列を元に抗ギンブナTCRδ鎖抗体を作製し、ギンブナのγδT細胞がI.multifiliisの傷害活性に関与しているかを解析する。また、T細胞マーカーであるCD3εに対する抗体を用いて、すべてのT細胞のI.multifiliisに対する応答も解析する。
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Causes of Carryover |
飼育設備の増設など多くの設備費がかかる予定であったが、当初の見積もりよりも低価格で目的の施設を増設することができた。また、平成30年度は、魚類のCD8+T細胞の寄生虫に対する傷害機構を明らかにすることをほぼ達成できたので、平成31年度は、寄生虫の傷害を担当するT細胞のより詳細な特徴を明らかにする予定である。そのため、TCRγなどのT細胞マーカに対する抗体を外注により作製する予定しており、多くの費用がかかることが予想されるため、次年に一部を繰り越した。
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Research Products
(3 results)