2019 Fiscal Year Research-status Report
Adaptive immunity of fish mucosal tissues against protozoan parasites
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17K07939
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杣本 智軌 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40403993)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 寄生虫 / 白点虫 / CD8陽性T細胞 / ギンブナ / 細胞傷害 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度までの研究成果によりギンブナのCD8陽性T細胞が白点虫(Ichthyophthirius multifiliis)のセロントに結合してグランザイムなどのセリンプロテアーゼを利用して殺傷することを明らかにしてきた。今年度は、白点虫を殺傷するCD8陽性T細胞のより詳細な特徴を明らかにすることを目的とした。RT-PCRの結果、エフェクター細胞として用いた鰓のCD8陽性T細胞は、TCRγを強く発現していること、一方で腎臓のCD8陽性T細胞は、TCRγをほとんど発現してないことが示された。また、鰓と腎臓のCD8陽性細胞ともにTCRβを強く発現していることも明らかになった。この結果からI. multifiliiに対する傷害活性には、αβT細胞とγδT細胞の両方が関与していると考えらえた。さらにアメリカナマズではNonspecific cytotoxic cell (NCC)が発現するNCCRP-1がI. multifiliisを認識する受容体として知られているが、ギンブナのCD8陽性細胞はNCCRのmRNAが発現していることが明らかになった。 さらに、I. multifiliiに対する傷害機構の詳細を明らかにするため、複数のチロシンキナーゼ阻害剤であるダサチニブ(Dasatinib)またはNF-κB阻害剤コーヒー酸フェネチルエステル(CAPE)で処理した白血球のI. multifillisに対する傷害活性に及ぼす影響を調べた。その結果、CAPEによりI. multifillisに対する傷害活性が有意に減少した。一方Dasatinibで処理した場合、傷害活性に変化は見られなかった。このことからギンブナCD8陽性T細胞は細胞外寄生原虫を認識すると、チロシンキナーゼ経路を介さずにNF-κBを活性化させることで細胞傷害活性を示すと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題で明らかにした寄生原虫に対する直接的活性を担うT細胞がγδT細胞でけでなくαβT細胞が含まれることが予測された。また、I. multifiliisを認識するギンブナCD8陽性T細胞の受容体の候補として、Nonspecific cytotoxic cell receptor protein-1(NCCRP-1)が考えられた。これらの成果は、本研究のひとつの大きな目的である寄生虫に対する細胞傷害活性に関与する受容体の同定に向け大きく前進したことを示すものである。T細胞がNCCRP-1を発現して機能しているという報告は無く、I. multifiliisに対する傷害活性への関与を証明できれば、比較免疫学における重要な知見となるであろう。以上のことから、受容体の同定には至っていないが、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ギンブナCD8陽性T細胞の寄生虫に対する傷害機序と認識受容体を明らかにすることを目的とする。令和元年度の研究において、細胞傷害因子やシグナル伝達活性化因子の阻害剤を用いた実験により、ギンブナCD8陽性T細胞は細胞外寄生原虫を認識すると、チロシンキナーゼ経路を介さずにNF-κBを活性化させることで細胞傷害活性を示すと考えられた。今後は、寄生虫と接触した際のCD8陽性T細胞のリン酸化による活性化の有無をタンパク質レベルで明らかにする。 また、抗ギンブナNCCRP-1抗体を作製し、ギンブナCD8陽性T細胞にNCCRP-1抗体が発現していることをタンパク質レベルで同定する。また、NCCRP-1のI. multifiliisの認識部位はすでに明らかになっていることから、その部位のペプチドを添加することによって、傷害活性が阻害されるかを確認する。
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Causes of Carryover |
令和元年度の研究により、白点虫を認識するCD8陽性細胞の受容体として、Nonspecific cytotoxic cell receptor portein-1 (NCCRP-1)が予測された。この仮説を証明すするためには、ギンブナのNCCRP-1を認識する抗体を作製する必要がある。現在、抗NCCRP-1ウサギ抗体作製に着手しているが、抗体作製には3か月かかり、令和2年5月中旬にウサギへの免疫が終了する予定である。従って、抗NCCRP-1ウサギ抗体作製を用いた白点虫を認識するCD8陽性細胞の受容体の特定は令和2年度に遂行しなければならず、研究費の一部を次年度へ繰り越した。
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Research Products
(3 results)