2017 Fiscal Year Research-status Report
頭足類酸素運搬蛋白質ヘモシアニンの会合体形成過程における酸素結合協同性の変化
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17K07942
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
加藤 早苗 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (80291061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タンパク質 / 会合体 / 酸素結合 / サブユニット / ヘモシアニン / 軟体動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋軟体動物ヘモシアニンは血リンパ液に存在する細胞外酸素運搬タンパク質であり、その分子量および分子構造は節足動物ヘモシアニンとは大きく異なる。この分子は最大のタンパク質分子のひとつで、分子量3.5~14 MDa の超巨大会合体であり、頭足類の分子は10 量体、腹足類の分子は20 あるいは30 量体であると報告されている(Markl,J.(2013))。ヘモシアニンはヘモグロビンの様にアロステリック効果を持つと考えられているが(Zhang,Q., et al.(2013))、巨大な会合体の生化学研究は進んでいない。そこで本研究では、軟体動物ヘモシアニンの会合体形成の生理的意義およびアロステリック制御機構の解明をめざし、会合体形成過程におけるアロステリックな会合中間体の同定を研究目的としている。 初年度は、試料調製と酸素解離曲線の検討を計画していた。計画通り、活イカから得たヘモシアニン試料について、10量体と会合体解離物の試料を調製した。計画では、ゲルろ過カラムによる10量体と解離物の分離分画を予定していたが、カラムクロマト実施中に会合体の解離が起こることが判明した。そこで、当初の予定を変更し、超遠心分離による分画を行い、画分中の会合体および解離物の補正を電気泳動上で区別する測定系を構築した。さらに、酸素結合能測定のため、酸素と二酸化炭素を定量的に供給して吸光値測定を行い、酸素解離曲線を測定した。測定データはコンピュータフィッティングにより、Hill係数と酸素アフィニティの算出を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、ゲルろ過カラムによる10量体と解離物の分離分画を予定していたが、カラムクロマト実施中に試料濃度が低下すると、会合体が解離することが判明した。これは、研究対象のタンパク質会合にはクラウディング効果が強く働いており、タンパク質濃度が高い場合には既知の会合体形成条件で10量体構造は保持できるが、タンパク質濃度が低い場合には会合体形成条件下でも解離が進行するためである。そこで、当初の予定を変更し、超遠心分離により会合体と解離物の分画を実施した。その結果、クロマトよりも迅速に試料調製することが可能となった。さらに、画分中の会合体に分子内架橋を施すことにより、SDS-PAGEで画分組成の確認ができるシステムを構築した。このため、一部研究計画を変更したものの、当初予定になかった画分組成確認法を構築するに至ったので、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度構築した実験方法と得られた知見を基にして、10量体と解離物、および会合中間体の酸素結合とアロステリック効果について検討を推し進める。今年度は酸素と二酸化炭素の混合ガスを用いて酸素解離曲線測定を実施したが、二酸化炭素によるpH低下の影響が危惧されたため、今後は二酸化炭素を窒素に置き換えて検討実施する予定である。
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Causes of Carryover |
サンプリングに関わる旅費、実験動物費が当初予定額より下回った。また、論文投稿料が不要となった。
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Research Products
(6 results)