2019 Fiscal Year Research-status Report
魚類の摂餌行動に関与するpH感受性の分子細胞基盤の解明
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17K07943
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
池永 隆徳 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (50553997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 貞夫 鹿児島大学, その他部局等, 理事 (50117496) [Withdrawn]
塩崎 一弘 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (70390896)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゴンズイ / in situ hybridization / トランスクリプトーム解析 / 脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
底棲性の海産真骨魚類であるゴンズイは海水の僅か0.1のpHの変化を感知し、これをゴカイなどの底質中の餌の探索に利用する。本研究では、この鋭敏なpH感受性を担う細胞や神経、および受容体を明らかにすることを目的としている。感覚刺激に対する細胞の応答は、生きた標本を用いた生理学的手法の他に、固定した標本においてc-fos遺伝子などの最初期遺伝子の発現を指標とする方法が利用されている。本年度はまずゴンズイのc-fos遺伝子のプローブを用いたin situ hybridization法を継続して実施した。脳における神経活動を引き起こすためにペンチレンテトラゾール(PTZ) でゴンズイを処理した個体と、未処理の個体におけるc-fos遺伝子の発現をin situ hybridization法で検出した。PTZで処理したゴンズイでは終脳、間脳、視蓋、小脳、延髄など、脳の広い範囲でc-fos遺伝子を発現する細胞の数が増えている傾向が見られた。それぞれの脳領域でc-fosを強く発現する神経核や領域を同定した。また、脳から抽出したmRNAを用いたトランスクリプトーム解析のデータより、神経活動マーカーとして知られているegr-1、およびnpas4遺伝子の発現についても同様に解析した。その結果、PTZで処理した個体の脳において、より多くの細胞でこれらの遺伝子の発現が発現している傾向がみられた。また、今回試験した3種類の遺伝子で、種類ごとに強く発現する脳の部位が異なっていた。以上の結果から、ゴンズイの脳においても複数の最初期遺伝子の発現を神経活動の指標とすることができると考えられる。さらに、トランスクリプトーム解析のデータより、グルタミン酸、およびGABA作動性ニューロンのマーカーであるvglut2.1とgad1、2遺伝子の発現についてもin situ hybridization方によって解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は実験室のある建物の改修工事が行われることになり、それに伴って一時的に研究室が移転することになったが、動物飼育のための専用のスペースの確保が困難であったため、年間を通じてゴンズイの飼育を安定した状態で行うことが難しかった。このため、感覚刺激に対する神経系の応答を検討する実験が十分に行えなかったため、現在までの進捗状況をやや遅れているとした。しかしながら、トランスクリプトーム解析のデータをもとにvglut2.1やgad1、2といった神経伝達物質のマーカーとなる遺伝子の脳での発現を検出することができ、このような手段は今後ゴンズイの神経系において特定の遺伝子がどのような細胞で発現しているかを解析していくために有益である。
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Strategy for Future Research Activity |
触鬚における味覚の一次中枢である延髄の顔面葉において強い発現を示す遺伝子マーカーを用いて、味覚及び低pH刺激に応答する神経細胞の検出を行う。また、トランスクリプトーム解析によって得られたデータから、触鬚で発現する味覚受容体について検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画に比べて業者に委託したトランスクリプトーム解析の支出が小さかった。生じた残額は次年度で主に分子生物学実験に関わる物品の購入に充てる予定である。
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