2019 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms of high light tolerance in microalgae
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17K07945
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
篠村 知子 帝京大学, 理工学部, 教授 (80579235)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 強光 / カロテノイド / 微細藻類 / ユーグレナ / 光走性 / 光合成活性 / 青色光 / 赤色光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はユーグレナのカロテノイドと強光ストレス耐性に焦点を絞り、ユーグレナが強光に対して「非常に速い運動応答」と「代謝の変化を伴うゆっくりとした生理応答」との、少なくとも2種類の応答を組み合わせ、強光ストレス耐性を向上させていることを、以下のように明らかにした。 ユーグレナから単離したフィトエン合成酵素遺伝子EgcrtBノックダウン系統をRNAiにより作出し、強光下における傷害忌避応答としての光走性運動に果たすカロテノイドの機能を調べた。このノックダウン系統は正常な眼点構造を失うことを蛍光顕微鏡やラマン顕微鏡や電子顕微鏡を用いて確認し、その光走性の運動解析を行った結果、「眼点を持たないユーグレナ細胞は光の方向が変わった時に方向転換のための回転運動を始めることができない」ことを見出した。従来、眼点のカロテノイドは、光の方向が変わった時の回転中に光受容部位に影をつくることで正しい光走性の方向を示す作用をもつと考えられてきたが、本研究により、ユーグレナの眼点カロテノイドは、より直接的に強光を受容し、回転運動を誘導して迅速に強光を忌避する機能をもつことがわかった。 さらに、強光照射に先立つ青色光や赤色光の照射によるカロテノイド蓄積や光合成活性への影響を調べた結果、比較的弱い強度(3 μmol photons/m2 s1)の青色光や赤色光照射により、カロテノイド分子種のなかでもβカロテンの蓄積量が対象区(暗所)の約1.3倍に増加し、このときの光化学系Ⅱの最大量子収率(Fv/Fm) が対象区の約7%向上すること、電子伝達速度(rETR)が約70%上昇することなどの結果を得た。これにより、あらかじめ弱い青色光や赤色光を一定時間受容することでユーグレナ細胞はβカロテンを多く蓄積し、光合成の光化学系Ⅱ下流の電子伝達を促進する生理応答により、強光ストレスを緩和する機構をもつことが強く示唆された。
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Research Products
(12 results)