2018 Fiscal Year Research-status Report
顕性感染型粘液胞子虫は食中毒を起こすのか? -下痢原性とその機序の解明-
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17K07954
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
河合 高生 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30250319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 博 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70261956)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クドア / Kudoa / 粘液胞子虫 / 下痢原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒラメ筋肉に寄生するがその寄生が顕在化しないタイプ(不顕性感染型)の粘液胞子虫であるナナホシクドア(Kudoa septempunctata)は、ヒラメの生食により一過性の下痢や嘔吐を呈する食中毒を起こし、公衆衛生上の問題となっている。一方、寄生が顕在化するタイプ(顕性感染型)のK. iwataiについて、ナナホシクドアと同様の症状を起こすことが示唆される有症事例がいくつか報告された。本研究では、K.iwatai等の顕性感染型粘液胞子虫について、下痢発症モデル動物とヒト腸管上皮培養細胞を用いて下痢原性およびその発症機序を解析し、顕性感染型粘液胞子虫の食中毒リスクを明らかにすることを目的とした。 昨年度に引き続き、K.iwatai胞子の下痢原性を調べるために、寄生の頻度が高いと考えられるキチヌとスズキ、クロダイを採取し、シストの収集を行った。しかし、予定シスト数に満たなかったため予備実験として乳のみマウスを使用した下痢原性試験を実施し、病原性を発揮する胞子数の閾値についての情報が得られた。ヒト腸管上皮培養細胞(Caco-2細胞)を用いたin vitro腸管透過性試験による下痢原性の評価試験では、高濃度の胞子を接種した際にTER(経上皮電気抵抗値)が減少することがわかった。しかし、本実験は試行回数が少なく、再度の検証が必要であると考えられた。また、シストの色調によって、シストに含まれる胞子の生残率が大きく変わることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、K. iwatai胞子の下痢原性を調べるために、夏期にキチヌ25尾を使ってシストの採取を行った。寄生率は84%と高かったが、シストは416個と計画していた実験には数が足らなかった。そのため、予定していた実験群や実験群毎に使用するマウスの匹数を減らして予備的に乳のみマウス試験を実施した。病原性を発揮するための胞子数の閾値を推測することができたものの、予定した実験群を試験できずに終わった。Caco-2細胞を用いたin vitro腸管透過性試験による下痢原性を評価したところ、試行回数は少ないものの、高濃度の胞子を接種した際にTERが減少した。 冬季にキチヌ41尾、スズキ6尾、クロダイ17尾を使ってシストの採取を行ったところ、寄生率はそれぞれ50%、50%、35.3%であった。シストの大きさは不定で、実験に必要な胞子数を採取できなかったため、乳のみマウス試験は断念せざるを得なかった。今回採取したシストには、色調が白色、黄色、褐色のものが混じりあっていたため、シストの色調による胞子の生存率を顕微鏡的に調べたところ、シストの色調によって胞子の生存率が大きく変わることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
シストの色調によって、シストに含まれる胞子の生存率が変わることがわかった。昨年度に宿主魚の個体差と考えたK. iwatai胞子の個体間による下痢原性の違いは、シストの色調による生存率が影響した可能性が考えられた。この可能性を明らかにするため、寄生魚よりシストを採取し、乳のみマウス試験を実施するとともに、胞子の生死判定試験を行い、胞子の生存率と下痢原性の関係を明らかにする。また、胞子を接種した乳のみマウスの腸管について組織学的解析を行い、遺伝子発現解析も検討する。Caco-2細胞を用いたin vitro腸管透過性試験による下痢原性の再評価を試みる。
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Causes of Carryover |
(理由)2018年度に動物実験を行い、組織解析等の実験を行う予定であったが、天然魚を使用する実験のため、残念ながら計画していた実験に必要な寄生虫材料を収集することができず、計画を変更して予備実験として実験の規模を減らしたため、未使用額が生じた。 (使用計画)このため、次年度に計画した実験を再度行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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