2017 Fiscal Year Research-status Report
Developing climate change resilience for farmers and rural communities
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17K07960
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
丸山 敦史 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (90292672)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フィリピン / 脆弱性 / 回復力 / DEA |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、気候変動の影響(脆弱性)に関する2次データによる統計解析を行った。その結果、フィリピンの脆弱性水準は、2000年以降減少傾向にあるものの2012年以降下げ止まっていること、食料輸入率や国内農業の生産能力、農村人口といった食料需給面が脆弱であり、それが暴露量と敏感度、感受性から算出される全体の脆弱性水準を高める構造になっていること、更に、ダム容量や安全な水へのアクセス、水資源依存率といった水関連の脆弱を低減させることがより効率的に全体の脆弱性水準を引き下げる可能性が高いことが分かった。 次に、村レベルでの脆弱性と回復力を評価するための調査を企画し、実施した。この調査では、台風被害の規模と被害からの回復の程度を、地域の地形や産業構造、コミュニティーの状態、インフラの整備状況といった要因で説明したときに生じうる村間の差異を検討するために行うものである。また、次年度以降に予定している世帯調査の事前調査という意味合いもある。分析対象は、過去3年間に台風被害を受けた地域(フィリピンルソン島南部)の26村(稲作が主たる所得源である村:16村、内水面漁業、特に養殖、が主たる所得源である村10村)である。 分析手法には包絡分析法(DEA)を採用した。分析結果は、ポテンシャルが十分に発揮されていない(災害対策の効果が十分に表れていない)非効率的な村は全体の3~4割であった。また、稲作村と漁村との間には統計的に有意な違いはなかった。他方、効率的な村と非効率的な村との間には、農漁業依存度やコミュニティー内の親睦度などの項目で差異があった。 今年度の調査では、気候変動の脆弱性と回復力に影響を与えうる要因が明らかになったが、それらを改善することは統一の基準、画一的な施策で達成されるものではない。今後は、個別世帯レベルでの問題把握を行い、より詳細な分析を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既往研究と2次資料による分析により全体構造が明らかになり、村落調査により今後の調査で注目すべき点が明らかになった。他方で、予定していた分析手法には限界があり見直しが必要になったものの、別の手法を採用することにより、一定の知見を得ることができている。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、次年度は、世帯の脆弱性と回復力を評価するための枠組みと実施体制の整備、調査の実施とデータの一次処理が主たる業務となる。最終年度は、そのデータを用いた解析と取りまとめを行い、計画に余裕が出た場合は追加調査の実施を検討する。今年度は、調査地の決定とサンプリングの過程に不手際が多かったため、次年度は、現地調査協力者との打ち合わせの機会を増やすなどして対応したい。
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