2017 Fiscal Year Research-status Report
農協における剰余概念と剰余金処分の理論的・実証的研究ー農協改革との関連でー
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17K07963
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
田代 洋一 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 名誉教授 (00092651)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農業協同組合 / 農協法 / 1県1農協化 / 単協 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は広域合併農協を集中的に聞き取り調査し、広域合併に伴い、旧農協ごとの剰余金処分のあり方と合併農協としてのそれを比較しつつ、そこにいかなる政策的配慮が働いたかをヒアリングした。ヒアリングは上記テーマに限らず、広く、合併の理由、合併に伴う組織組成、大型農協のガバナンス、合併による支店・職員等の変化、信用共済事業と経済事業・営農指導事業の組み立て、合併の成果等をヒアリングした。 科研費を使用してのヒアリング対象は、沖縄、香川、島根、福島、長野、山形、山口等にわたり、また科研費を使用するに至らない地元の数農協のヒアリングも実施した。 初年度として、情報収集に力点をおいたが、農協改革、とくに信用事業代理店化や准組合員利用規制が検討される中で、各農協とも、剰余金処分のあり方、とくに内部留保と組合員還元、還元方法としての出資配当と事業利用分量配当、関連して総合ポイント制度等について特段の注意をはらうようになっている現実を確認できた。 しかしながら、合併に当たり、旧農協が打ち出していた水準を無視することは出来ず、また新たな状況を反映させることもさることながら、高位平準化という合併合意に引きずられる面も散見された。 また准組合員利用規制が検討される中で、准組合員の利用から得た収益をどう准組合員へ還元するかという点での問題意識の欠如も感じられる。剰余金処分をめぐる正組合員と准組合員の意見交換の場の必要性も感じられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒアリングは概ね順調に進捗しているが、1県1JA化を果たした全国4JAのうち、1JAからはヒアリングを断られ、実施に至らなかった。この農協については過去の調査報告もあるので、それと現在の総代会資料やディスクロージャー誌を比較することとしている。 農協改革や農協合併という微妙な時期にあり、今後もそういう事態がありうるが、いろいろな側面からのアプローチを心掛けるとともに、ヒアリング結果の扱いは慎重に行い、信頼を欠くことのないように努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、広域合併農協の事例調査を継続する。当面は福島、岩手、山口等を計画している。 剰余金処分のあり方とともに期中還元の一環として集落営農法人への助成等に視野を拡げたい。また今年度のヒアリングで、各農協とも基礎組織としての農家組合の空洞化、形骸化に苦慮している現実が強く認識された。剰余金処分のあり方を組合員、とくに正組合員と准組合員がともに考える場としての農家組合は需要なので、その実態や方策についても研究の枠を拡げたい。 初年度の研究成果を次年度上半期に『21世紀の農協合併』としてとりまとめ、筑波書房より出版する。
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Causes of Carryover |
研究費は専ら旅費に充当したため、旅費計算上より若干の金額を使い残すこととなった。 次年度には旅費及び消耗品購入の一環として使用する。
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Research Products
(8 results)