2017 Fiscal Year Research-status Report
EU市場下における農協の多国籍化・「会社化」とガバナンス構造の研究
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17K07965
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 秀樹 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (90227166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 元 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (40762779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多国籍農協 / 農協の「会社化」 |
Outline of Annual Research Achievements |
EU統一市場の下で、農協の国を超えた合併や「会社化」の進む、デンマーク、スウェーデン、アイルランドの3カ国の農協中央機関を訪問し、農協に関する近年の動向に関する情報や資料を収集した。特に酪農協同組合については多国籍農協としてArla Foods、「会社化」の事例としてアイルランドの酪農協同組合の情報が収集できた。 スウェーデンはデンマークに比べ条件不利地域が多く、市場開放と共に農業の厳しさが増しており、農協の買収による消滅(食肉加工農協)などが見られた。1995年のEU参加以降の農協の変動が大きいのが特徴であった。現在、スウェーデンでは、穀物販売・資材購買農協のように、国レベルに範囲を拡大した農協が主流であるが、唯一、森林所有者農協のみが、地域ごとに4つ残っており、森林分野でのスウェーデンの競争力の高さの反映であると考えられる。 酪農分野では、単一化し、もしくは国際化した大規模酪農協の他に、小規模の有機酪農協の存在があった。アイルランドでは、酪農事業は大規模農協に依存しながら、生産資材供給等に特化し、地域での雇用確保と存在意義を高めている農協事例もあった。食肉分野では、スウェーデンでは消滅した農協に代わり、他国の食肉農協の進出が見られるが、小規模の民間と畜業者の拡大傾向が見られ、農協を離れた畜産農家が民間と畜業者利用に移っているようである。 30年度は、以上の情報をもとに、条件不利のスウェーデンとアイルランドに焦点をあて、組合員レベルを含めた調査を行う予定である。さらに隣国のフィンランドについても情報を収集する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査予定であったデンマーク、スウェーデン、アイルランドの農協もしくは農業者の全国組織において聞き取り調査が実施できた。当該国における農協全般の動向に関わる情報収集ができた。また、農協事業の国際化と関わる近隣諸国の農協の情報も入手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はターゲットなる農協、具体的には酪農協同組合にしぼって、組合員レベルも含めた調査を行う予定である。すでに、29年度において調査をお願いした農協全国組織を通して、調査対象となる組合員農家を選定してもらいつつある。 また、北欧、およびアイルランドの農協研究者の研究成果の収集も進めており、今後は研究者との意見交換を含めた交流を行いたいと考えている。
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