2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K07967
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
坂井 教郎 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (80454958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 重之 琉球大学, 農学部, 教授 (30333397)
杉村 泰彦 琉球大学, 農学部, 准教授 (80405662)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | さとうきび / 多角化 / 台湾糖業 / 公益性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の海外研究はさとうきび産地としての台湾の調査を行った。台湾では1990年代まで約500万トンのさとうきびが栽培されていたにも関わらず,現在は50万トンと激減している。このような中で,製糖企業はどのような変化を遂げたのか,またさとうきびが減少した中で,台湾の土地利用,農業経営,農村経済はどのように変化し,それに対して台湾政府はどのような対応を行ったのかについての調査を実施した。その結果,次の点が明らかになった。 台湾の製糖企業(台湾糖業)は国営企業であるが,この間,事業の多角化を進め,製糖だけに依存しない体制になっている。特に多量に土地を保有していたため,ガソリンスタンド事業や不動産業などの土地利用型の事業に優位性がある。農業関連の事業については畜産事業が大きいが(売上額の約1割),園芸作については売上に占める割合は低い。砂糖事業は売上全体の2割程度を占めている。これには輸入糖の販売事業も含まれるが,国の安全保障上,最低限の砂糖生産を続けるため,現在の2工場体制は今後も維持する。他方で,台湾糖業は国営企業であることから,企業利益だけでなく,公益性の観点からの環境の保全や地域農業への貢献という点を重視していた点も注目される。 台湾の土地利用については,広大なさとうきび作の跡地を他の作目で埋めることはできず,かなりの部分を植林によって埋めている状況である。またさとうきび農家は製糖工場の閉鎖後,労働集約型の作目や水田へ転換するとともに,この時期は高度経済成長の人口流出期に重なっていたことから,農家の貧困問題などの大きな社会問題には繋がっていない。 国内研究については,主に統計分析からさとうきび作の意義と展望についての分析を行った。その結果,単収向上の是正,他作目との連携の必要性について指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道調査は地震の影響で出来なかったが,その分を前倒しで台湾調査を実施したので,概ね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から明らかになったさとうきび作の存在意義の向上のために,他作目との連携の方策について研究を実施する。具体的には,まずは畜産との連携である。今年度は,伊江島と与論島で調査を実施し,畜産等との連携方策について検討する。 伊江島は以前からさとうきび・肉用牛・葉たばこの連携が存在したが,葉たばこ作の衰退により連携が崩れ,また製糖工場も廃止されてしまった。しかしそのことで,様々な問題が発生し,再度製糖工場が建設され,堆肥センターを軸にした耕畜連携の取組みが進みつつある。 また与論島では畜産農家グループがさとうきびの梢頭部を飼料として確保するために,自らがさとうきびの収穫機械を保有する事例が見られる。またそうした畜産農家が島の堆肥センターを仲介にして,さとうきび農家と連携している。 本年度はこの2つの島の事例について,各連携主体の調査をもとに,連携のための条件,必要な仕組み,およびその収益性についての研究を実施する。 また海外の島嶼部のさとうきび衰退後の農村の実状についての調査も引き続き実施する。
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Causes of Carryover |
夏に北海道の調査を予定していたが,地震のために実施できなかったため。ただし多くの旅費・通訳費用を必要とする海外島嶼部の調査にその費用を充てる。
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Research Products
(3 results)