2022 Fiscal Year Annual Research Report
Social Factors and Extension Procedures for Promoting Sutainable Agriculture
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17K07978
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
市田 知子 明治大学, 農学部, 専任教授 (00356304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 栄一郎 法政大学, 比較経済研究所, 教授 (30328900)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境保全型農業 / 生物多様性 / 農村環境 / コモンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における環境保全型農業の先進地である栃木県宇都宮市旧河内町を訪ね、NPO法人グラウンドワーク西鬼怒活動センターの代表者から聴き取りを行った。旧河内町では最大1ha区画の圃場整備後の水田およびその周辺に1996年、生態系保全を目指した県営農村自然環境整備事業を導入した。魚道、二段排水路、井桁沈床工、カエル蓋などにより、カエル、ドジョウ、フナの生息域を創出、維持している。圃場整備後の水田の生物多様性保全のためには、減農薬・減化学肥料などの農法の転換のみならず、生息域を確保するための追加的な施工を行う必要があるという示唆を得た。 さらに、農村の社会単位であるむら(農業集落)を基点にして、「むらの資源」、その総体である農村環境を、社会全体の共有財産、すなわちコモンズとして捉え、その意義について考察した。水田農業地域では一般的に高齢化や担い手不足によって農業用水(ノラのコモンズ)の維持管理も難しくなっているため、国が多面的機能支払交付金という政策によって、農業用水の改修や「長寿命化」を図っている。三重県の立梅用水のように住民自らが農業用水の歴史的価値、景観維持、生物多様性など、コメ生産以外の機能の重要性を見出して活動している所は少数である。そこでは、農業用水の歴史的価値を保った状態で維持管理し、後世に残すことについて、住民の合意形成がなされ、農業用水のもたらす「環境」の価値を地域の「社会」が共有し、それを国や自治体の「経済」的な支援が支えていることを明らかにした。
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