2017 Fiscal Year Research-status Report
食品残さ飼料化における法制度的・社会経済的フィルターに関する基礎研究
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17K07980
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
淡路 和則 龍谷大学, 農学部, 教授 (90201904)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 飼料規制 / エコフィード / 食品リサイクル / バイオマス / カスケード利用 / 認証制度 / 食の安全・安心 / 差別化 |
Outline of Annual Research Achievements |
飼料資源の利用と政策・制度について、ドイツを対象に飼料規制の最大の契機となったBSE問題を境に、飼料原料の構成の変化を把握した。具体的には動物性たんぱくが反芻家畜に使用できなくなったことによって、どんな飼料原料の利用が増えたのかを観察し、そのなかで食品残さの利用動向をとらえた。ドイツ調査が実施できなかったため、現地の研究協力者から情報提供を受けてデータを分析した。ドイツでBSEが発生した2000年までは、肉骨粉が穀物単位で390千トン、動物性油脂457千トン使われていた。それが規制によって利用できなくなったことによって利用量が増えた飼料原料は、穀物をはじめとする飼料用作物と食品製造副産物である。とくに前者の伸びは大きく、2000年から2010年で7倍に増加している。食品製造副産物は1割増に満たない。動物性たんぱくの飼料規制によって、肉骨粉、動物性油脂から食品製造副産物を使ったエコフィードが増加する傾向はみられなかった。増えたのは植物性の原料であり、土地利用の作物を利用する方向にシフトしたことがうかがえた。飼料作物および作物残さ、植物性の食品加工残さ、動物性の飼料原料の比率は、1999年に51.9%、16.5%、2.4%だったものが、2010年には、84.7%、14.7%、0.6%になっていた。飼料利用できなくなった肉骨粉や動物性油脂の新たな使途については、ドイツで急増したバイオガスプラントへ供給されるケースが数多く確認された。これはバイオマスのカスケード利用に沿った流れとみることができた。 日本国内の食品残さの飼料利用について、実態調査および公表事例から、飼料費低減と高付加価値化の二つの方向性があることが確認できた。さらに畜産物の差別化に対応して原料が消費段階の食品残さから食品製造副産物、食品加工残さへと、フードシステムの川登り傾向があることを把握できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
配偶者の看病のため調査(とくに海外調査)が予定通り進まなかった部分があったが、情報収集を行うことでカバーできた。次年度は、家庭の状況を踏まえて柔軟に対応できる調査計画を立てる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の飼料規制の変化と飼料資源の利用の変化をトレースする。また、畜産物市場の成熟によって差別化が求められる中で、利用される食品残さがどのように変わってきているのかを把握する。そのためにエコフィード利用して家畜を使用し、その食肉等産品を販売している事例を調査する。 海外調査については、食品残さの利用が食の安全と食品ロス削減という相反する社会動向の中でどのように影響を受けて展開しているかを把握する。対象は、引き続き、リサイクルが進む中で食の安全基準を高めているドイツを中心として実施予定であるが、デンマーク等の北欧を視野に入れて情報収集を行う。
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Causes of Carryover |
配偶者の看病のため海外調査が予定通り遂行できなかったことにより、その分の旅費と通訳等を持ち越すことになった。対応として一部国内調査に振り向けたが、約30万円を繰り越すことにした。未実施であった海外調査は次年度に実施する予定である。
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Research Products
(1 results)