2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07995
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
菊地 香 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (30325831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝辺 哲男 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50592622)
中村 哲也 共栄大学, 国際経営学部, 教授 (80364876)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食文化 / 移民 / 南米 / 年中行事の食事 / 通過儀礼の食事 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究実績は、次のとおりである。第一に日系移民が多く居住するブラジル・サンパウロとアルゼンチン・ブエノスアイレスとラ・プラタを対象とした。日本食の代表にあげられているものは寿司である。ネタが魚に限らず焼肉など現地の食事事情にあわせて変化している。また、サンパウロの東洋人街では、日本食が中食的な展開を見せている。サンパウロの東洋人街に限らず、市内各地のスーパーでベントウが販売されており、中食産業の展開がある。 第二にサンパウロとブエノスアイレスの沖縄県人会を通じて、移民の食文化継承に関して調査をした。サンパウロの移民で認識できていない年中行事は、食事の提供が完全に省略されている。通過儀礼は、通過儀礼を1世が認識しつつも、実施していない。ブエノスアイレスでは、主要な年中行事を実施することにより県民性を忘れないようにしている。同様に通過儀礼も、形を変えながらも実施されている。 第三に現地のスーパーや小売店では日本食に欠かせない食材が普通に販売されている。醤油や味噌、インスタント出汁にとどまらず鰹節や昆布、日本酒やみりんといった調味料が販売されている。特に醤油は現地醸造品や、日本のメーカーが現地生産しているものもある。これについては結果を整理中である。日本食の調理に不可欠な調味料は、現地で普通に販売している。また日本の日常的な食事が移民のなかで継承されており、サンパウロの移民家庭では沖縄県の日常食が喫食されている。またブエノスアイレスも同様であった。 第四に、沖縄県の食文化の現状について参与観察と文献を通じて検討した。牧志公設市場は、仮設にて営業中の2019年12月31日でも移転前と同様の賑わいを見せていた。さらに2020年2月には石垣市の公設市場も参与観察を行った。沖縄県の食文化継承に関した文献調査では、地域性を確保できている伝統的な食文化が家庭のなかに残されにくい環境にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、2018年度以来変化しない研究代表者の職場における研究環境が悪化したことで、2018年度の研究方法の大幅な変更により成果を上げにくい状況であった。また2019年度は、夏季と秋季に台風害があり、調査先の事情もあり、実地調査が不十分となってしまった。 2019年度において菊地は、文献サーベイによる沖縄県における食文化継承が学会誌に掲載された。また、2017年度におけるブエノスアイレスでのインタビュー結果をまとめ、学部紀要に掲載された。サンパウロでのアンケート結果が学部紀要に掲載された。中村は、沖縄県の食文化のルーツを文献を通じて明らかにした。溝辺は、ブラジルの統計資料をもとにブラジルの大豆におけるバリューチェーンの変化と調味料に関したニーズを明らかにした。 2019年度はアルゼンチンとブラジルにおいて量的調査と質的調査を実施した。結果を現在まとめて成果発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は2019年度に実施できなかった内容を中心に研究を進める。 1)Step1と2の分析結果を踏まえてさらに、食品の商習慣とマーケティングの特性を明らかにし、流通の阻害要因を統計資料の整理から明確にする。これにより日本食の輸出上の許認可制度や行政手続きの課題を明らかにする。この部分は資料だけが蓄積しており、整理が途上となっている。2)実証調査を通じて、実施上の課題を明らかにする。Step1と2における分析結果を踏まえるが、2018年度ならびに2019年度の遅れからブラジルとアルゼンチンにおける組織的な移民における調査の結果をまとめることをする。現在、ブラジルでの調査が1つだけ残されている。3) これら研究を基にして、今後の日本食輸出のポテンシャルを量的に分析する。また、日系企業を中心とする販路開拓の課題を実証的に明らかにする。 質的な調査はインタビューを通じて量的調査で明らかにできない項目を深掘りする。とくに沖縄県出身の移民が多いブラジル・カンポグランデにて量的な調査を行なってから、質的な調査を行い、伝統的な食文化の継承が移民社会でどのようになっているのかを把握する。 なお、事例地は国内を沖縄県八重山地域、海外は進捗が遅れているので移民受け入れ実績の多いブラジル・カンポグランデとする。なお、ブラジル・サンパウロに関しては2019年度に調査票を配布しており、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の問題により2020年3月までに調査票を回収ができず、併せてインタビューができていない。カンポグランデでの調査時に立ち寄ることで、サンパウロでの活動を完了せる予定である。
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Causes of Carryover |
南米での沖縄県出身の移民を対象にしたアンケートやインタビューはほぼ完了できた。残されているのは、サンパウロの沖縄県人会に留置した調査票の回収と、沖縄系移民が多く居住するカンポグランデでの調査である。これらは本来であれば2020年3月に実施しすべきところ、新型コロナウィルスのパンデミックスを受けて年度内の海外調査が不可能となった。さらに、移民の出身地の沖縄県での食文化の現状認識が不十分である。2019年度内に検討したが、調査すべき時期の8月から9月までに豪雨被害で航空機の欠航となり、調査先に出向くことができなかった。他の時期も南米への調査があり、予定が組めなく2019年度が完了した。より食文化継承の問題を明らかにするためにも期間延長して調査を続行したい。 ブラジル調査を2020年11月上旬に予定し、旅費概算額は21万円とし、沖縄県の調査は2020年12月中旬に予定し、旅費概算額は6万円とする。
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