2018 Fiscal Year Research-status Report
サスティナビリティに向けた農村空間の評価と施策に関する研究
Project/Area Number |
17K07999
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤居 良夫 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (60181327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内川 義行 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (20324238)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農村計画 / サスティナビリティ / 農村空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,農村のサスティナビリティを保持するため,とくに「レジリエンス,生業・生計,文化的景観」と農村空間構造の関連に注目して,有効な施策や対策を評価することを目的としている。H30年度は,「レジリエンス」の面から,長野県の小谷村と白馬村を対象に,生活利便施設へのアクセス性を将来人口推計との関係から評価する手法を検討し,小さな拠点の形成の可能性を調べた。その結果,2050年までの期間に,全ての施設において人口の半数が利用できる距離は両村とも若干短くなるが,すべての人が利用できる距離は変わらないことがわかった。小さな拠点の形成を旧小学校区から考える場合,白馬村では可能であるが,小谷村では困難な状況であるといえる。「生業・生計」の面から,小谷村を対象に,1970年代から現在までの棚田団地の変遷と,各種取組みとの関係性について検討した。その結果,村内の集落は各種条件の優劣から大きく2グループに分類できた。条件の劣る集落では,生産面におけるサスティナビリティは厳しい状況にあるが,環境面では生物多様性等から棚田活用の可能性を模索すべきであり,条件の優位な集落では,観光との連携を図り,宿泊施設等での生産物利用を図るべきであると考えられる。「文化的景観」の面から,白馬村青鬼集落を対象に,サスティナビリティの基礎的実態の把握を行った。その結果,集落内の通年居住者は8人に,棚田耕作者は2人にまで減少しており,棚田の多くは耕作放棄地になっていることがわかった。重要伝建地区に指定された茅葺き屋根の施設や棚田は直接的な活用実態は見られず,集落の現状維持が限界である状況が把握された。しかし近年,集落外に居住する次世代の人たちが各種の集落活動に参加する傾向があること,それらをサポートする集落外の支援者が存在することが捉えられた。今後,これらの継承・交流の発展に文化的価値を活用することが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
農村の存続に関わるサスティナビリティを効果的に保持するため,農村空間の構造との関連からサスティナビリティに係る要因を捉え,集落および農村全域レベルで有効な施策や対策を評価するため,長野県内の農村を対象に,集落および農村全域について,生活利便施設の立地,生産環境の変遷,文化的景観の保持などについて詳細に調べた。 とくに,「レジリエンス」,「生業・生計」,「文化的景観」と空間構造の関連に注目して,行政および集落住民に対する聞き取り,資料の収集,現地の踏査などを通し,農村地域のサスティナビリティにつながる様々な要因を分析したが,これらの結果は今後の研究のための基礎データとすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,「レジリエンス」,「生業・生計」,「文化的景観」に関する要因を地理空間情報と関連づけて時空間データベースとして蓄積し,さらに,生活環境に関する住民の意識調査結果を農村地域のサスティナビリティに関する人的要因としてデータベース化し,それらを定量的および定性的評価に資する基礎データとして,生活の質(Quality of Life;QoL)の評価を行う。また,調査と評価の過程および結果を可視化するため,地理情報システムを用いて,農村全域,集落,さらに100mメッシュを単位に各要因の主題図を作成する。この空間構造に関連する物的要因および人的要因のデータベースは,経年的に更新および追加できるような形で,将来の農村地域のサスティナビリティに向けた農村空間の効果的な施策や対策を評価することができるように検討する。
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Causes of Carryover |
学会論文集へ投稿した論文審査がすでに終了し,掲載可になり現在印刷中である。今年度,その投稿料・審査料・掲載料を残しておいたが,これらの費用の請求がまだ学会から届かないため,次年度に使用する予定である。また,今年度,カラーコピー機トナーカートリッジとイメージドラムの購入を予定していたが,今年度不足をきたさなかったため,次年度に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)